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2020年8月10日 (月)

ナベツネさん

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https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2020106406SA000/

 昨日のNHKスペシャルで、ナベツネさんこと渡辺恒雄(写真一枚目)の「戦争と政治~戦後日本政治の自画像~」を見た。ナベツネさんは歩行器を使っているようだが、94歳にしては記憶力と言い、たいへんにお元気である。マスコミのロングインタビューは意外に初とか。戦後の日本表裏政治史を知る歴史的価値がある人物と言う事か。

 歴代首相の戦争体験が戦後日本に与えた影響が大きいとーー戦後75年で戦争記憶が急速に薄れていく今、戦後の日本が戦争とどのような距離感で作られていったか、ナベツネさんの証言で繙いて行くのがNHKの狙い。元来、高尚なテーマの筈だが、話はどろどろした政界の裏話の方がむしろ面白い。なかでも、戦前、東条内閣の閣僚であった安倍首相の祖父、岸信介首相への戦犯を憎む渡辺の風当たりが厳しい。

 ナベツネさんが記者として出世したそもそもは、大野伴睦の番記者になって可愛がられてから。岸首相の後継首相として、当時の自民党4人の首脳による密約があり、指名トップは大野伴睦だったが、蓋を開けたら池田勇人であった。フィクサー児玉誉士夫が持っていた密約書を、ナベツネさん自身が撮影した写真まで今回披露した。

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http://joudeki.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-efd9ec.html

 この首相後継の別の裏話が、これもナベツネさんから聞いた話として、写真二枚目のロバート・ホワイティング著「ふたつのオリンピック 東京1964/2020」に載っている。ナベツネさんが、岸信介の弟の佐藤栄作首相が大嫌いで、攻撃記事を年中書いたので、たまりかねた佐藤栄作の妻が金を持って家に挨拶に来たが、渡辺の妻は受け取らなかったらしい。

 ところが、読売のある事業で政府の認可が必要となったが、渡辺をワシントン勤務に飛ばすことで、読売は政権と折り合ったと言う。その際の英会話教師として、ホワイテイングはナベツネさんと親しくなったのだ。渡辺から聞いた話では、池田勇人首相が喉頭がんで喋れなくなったさい、次期首相を指名した紙には、河野一郎と書いてあったが、この紙は消え失せ、大金がばらまかれて佐藤栄作と書いた紙が現れたと。

 余談だが、その後、プロ野球記者のホワイテイングは読売社長になったナベツネさんから、東京ドームへの出入り禁止になった。東京ドームの満員の入場者数は、巨人は5万6千人と常に発表するが、実は4万7千人だとすっぱぬいたのである。渡辺が怒った理由は、ウソを暴いたことではなく、ライバル朝日に情報を流したことだと言う。(参考)2019.9.6の本ブログ「東京の裏面史」 http://joudeki.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-efd9ec.html

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http://joudeki.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/post-3a8d.htm

 NHKスペシャルで、ちらと九州在の西山太吉元毎日新聞記者(写真三枚目)が登場した。日韓国交正常化で、渡辺がアレンジして大野伴睦を韓国へ交渉に行かせたとされ、インタビュアーのNHK大越健介が、記者としてちとやり過ぎではないかと詰問すると、国交正常化の前だから何でも許されると妙な屁理屈で渡辺は答えた。

 政治記者として、渡辺と当時凌ぎを削っていたのが、毎日新聞の西山記者であり、ナベツネさんの日韓正常化交渉での暗躍を今回NHKの取材で認めている。この西山と言う人は、毎日出身の山崎豊子の小説「運命の人」のモデルでも有名である。沖縄返還交渉の密約情報を外務省の女性事務官から入手し、政治家へ流したとされる「西山事件」の当事者である。国家機密か国民の知る権利かで裁判は争われたが、小説では渡辺は報道の自由から西山側の証人となっている。

 ところが、2012年にテレビ化された「運命の人」を見た渡辺は烈火のごとく怒った。田中角栄首相に渡辺のモデルが這い蹲って請願するシーンがあったのだ。だいたい渡辺は田中角栄とはさしで飲んだことさえないと。皮肉なことに、この事件で「運命の人」は一気に有名となったらしい。(参考)2018.10.5の本ブログ「運命の人」 http://joudeki.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/post-3a8d.html

 意外なのは、憲法改正を推進するなど右より保守総本山読売の主筆であるナベツネさんが、靖国神社参拝には反対なこと。その点では安倍首相は小泉元首相と並んで落第である。

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