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2020年7月 1日 (水)

なぜノーベル物理学賞をとれたのか

Bha

https://www.sankei.com/life/news/151006/lif1510060042-n1.html

 「ノーベル賞の科学 なぜ彼らはノーベル賞をとれたのか 物理学賞編」(2009年、矢沢サイエンスオフス編著)を、化学賞編に続いて図書館から借りた。1983-2008年の主な16人が特集されているが、内4人の日本人が載っているので紹介する。

 まず、写真一枚目右の小柴昌俊氏(1926-)は、2002年「天体物理学、特にニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献」で物理学賞を受賞。東大教授として当初は「陽子崩壊」を観測すべく、1983年岐阜県神岡鉱山の地下1000mに3000トンの純水プールのカミオカンデを造り、光電子増倍管1000個で観測した。ところが3年間観測しても「陽子崩壊」は一向に起こらず、それこそ国家予算の無駄使いの典型例とされそうになった。

 そこで、ニュートリノの検出に方針転向し、設備を整えて1987年元旦から観測を始めたところ、なんと54日後に、「超新星1987A」からのニュートリノ・シャワーを捉えたのだ。13秒間に11回観測され、そのエネルギーは、太陽が過去50億年間に放出した量の1000倍もあったという。

Particles

https://www-he.scphys.kyoto-u.ac.jp/nufrontier/neutrino.html

 ところで、ニュートリノとは何であろうか。第2図に示すが、物質の基本構成粒子である素粒子は、物質粒子、力を運ぶ光子などのゲージ粒子、質量を与えるヒッグス粒子の3種からなる。更に、物質粒子は、原子核を作るクオークと電子などのレプトンからなるが、ニュートリノはこのレプトンの仲間である。ニュートリノは電気を帯びておらず、小さくて軽いので、あらゆる物をスイスイ通り抜ける。太陽や超新星爆発、原発などでも発生し、1秒間に100兆個ものニュートリノが我々の体を通り抜けているが害はないらしい。

 従来、このニュートリノには質量がないと考えられてきたが、若干の質量があることを、1998年、写真一枚目左の梶田隆章氏が発見し、2015年「ニュートリノ振動の発見」で物理学賞を受賞した。梶田氏は東大の小柴氏の弟子。なお、本書の出版後の授賞なので梶田氏は載っていない。

 カミオカンデは1996年にその使命を終えたが、同年、2代目のスーパーカミオカンデが稼働を開始。5万トンの純水と1万2千個の光電子増倍管で陽子崩壊を監視したが今回も失敗。だが、1998年、地球の下部からのミューニュートリノの数が、宇宙からくる数の半分しかないことから、地球内部でミューニュートリノの一部がタウニュートリノへ変身した(振動という)ことが判り、ニュートリノに質量があることが証明されたという。

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https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d7bfaa2f112a267aa1da4ecfa2a6c8f7

 最近の物理学賞は、カミオカンデ、スーパーカミオカンデなどに代表されるいわば「巨大科学」による成果が増えている。スイスのCERNを使った「ヒッグス粒子の発見」を筆頭に、アメリカのLIGOによる「重力波の発見」など国の威信をかけたように大きな国家予算が使われる。受賞者も研究室で一人コツコツというより、大きな組織のトップで、予算分捕りに長け、大勢の研究者のマネジメントに適した人が貰うようだ。

 その正反対に、昔流の紙と鉛筆で?2008年の物理学賞を取ったのは、写真3枚目の南部陽一郎氏(右、1921-2015)、小林誠氏(中、1944-)、益川敏秀氏(左、1940-)である。南部氏は「素粒子物理学における自発的対称性の破れの発見」、小林・益川氏は「小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の発見による素粒子物理学への貢献」が受賞理由。

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https://slidesplayer.net/slide/15151167/

 3人の授賞理由の共通項は、「対称性の破れ」だが、これを一般の人が理解するのは大変であろう。第4図はマスコミ受けする説明で、南部氏の業績は一口で言えば、上記に何回か登場した質量を与えるヒッグス粒子を予測したこと。南部氏は米国籍だが、もう半世紀前に大きな業績をあげ、教科書に載るほどの伝説的な人であり、2008年の受賞時は「今頃?」という感じだったらしい。また、ピーター・ヒッグス(1929-)は、1964年に南部理論をベースとして、ヒッグス粒子の仮説をたてたが、2012年CERNでヒッグス粒子が観測され、2013年に物理学賞を受賞している。

 一方、小林・益川氏の業績は、クオークとレプトンにおける第3世代の存在を提唱したことにあると。クオークではトップとボトムであり、レプトンではタウニュートリノとタウ電子である。 

A_20200701122001

https://www.youtube.com/watch?v=MY-jF0o0lRg

 写真5枚目の3人も本書には載っていない。2014年「高輝度で低消費電力の白色光源を可能とした青色発光ダイオードの発明」で物理学賞受賞。こちらの授賞理由は分かりやすいが、名古屋大の赤崎・天野氏は窒化ガリウムの結晶化により青色発光を可とし、日亜化学の中村氏は事業化に成功。中村氏も米国籍。

 

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