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2020年7月22日 (水)

舞い戻ったメインフレーマーたち

Honeywellquantumsolutionsinsi

https://japan.cnet.com/article/35155568/

 先月アメリカのハネウェル社が、世界最高性能の量子コンピュータ(写真一枚目)の商品化を発表し、IBM社のそれを凌ぐとした。これを聞いて、昔懐かしい汎用コンピュータ(メインフレーム)全盛時代を思い出した人も多いであろう。今ではクラウド(サーバとインターネット接続PC)やスパコンなどに押されて、すっかり影を潜めた感じだが、かってはメインフレームでは、IBM・ハネウェル・ユニシス・富士通・日立・NECなどが、血みどろの大激戦を戦っていたのだ。

 現在、メインフレーム市場は極端に小さくなり、IBMが80%をしめる独り勝ちだが、NECや東芝が提携していたハネウェル社も1991年には撤退している。特に、ウサギさんは、ハネウェルに売られたGEの頃から関係があるので、ハネウェルはまだコンピュータをやっていたのかと感慨深いものがある。

 ハネウェルの量子コンピュータの発表では、量子ビットにイオントラップ方式を使うそうだ。超高真空の中のイッテルビウム(原子番号70)のイオンが主役。イッテルビウムと共鳴する光をあて、演算後の0か1かを判定する。一方、IBMやグーグルは、絶対温度0度近くに冷却した超電導のワイヤーのループに電磁パルスを当てる方式で、現在のところこちらが主流と目されているらしい。

 IBMによれば量子コンピュータの性能は、「量子ボリューム」で決まると。つまり、量子ビット数、エラー率、連結量できまる数値で、IBMは53量子ビットで量子ボリューム32を達成して世界一の性能としていた。今回、ハネウェルは、4量子ビットしかないが、量子ボリュームは既に16であり、今後商品化するモデルでは、スケーラビリティが組み込まれているので、容易に64ボリュームに上がるので、IBMを上回るとしている。

Ec7bqq8u0aise2da

https://twitter.com/kojotaku29/status/1283175458582888448/photo/4

 ところで、昨秋、グーグルがセンセーショナルな発表をした。スパコンで1万年かかる計算を、量子コンピュータがわずか数分ですましたとした。これは勿論、量子コンピュータが得意とし、スパコンが全く不得意な問題を選んだので不公平ではあるが、まあ、グーグルが言う通りライト兄弟の初飛行に匹敵する快挙ではある。ただ、旅客機の一般普及にはその後40年以上かかっている。

 量子コンピュータの将来をどう考えているのか、最近、日本総研が優れた冷静な?レポートを出している。「量子コンピュータの概説と動向」。https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/pdf/11942.pdf

第2図は真に見辛いが、横軸が年度(左から2010、2019、2025、2035、2050年)、縦軸が量子ビット(下から0.5百、3百、5百、1千、2千、5千、10万、100万、1億)を表す。

 左側の赤い折れ線は、量子アニーリング方式と呼ばれるいわば(アナログ的)特化型量子コンピュータであり、既に2000量子ビットのD-WAVE2000Qなどが商品化されて、先行して実用化されている。特定の分野でデジタルな結果を求めないような応用に向いている。

 右側の青の折れ線は、汎用のゲート型量子コンピュータで、IBMやハネウェルなどが凌ぎを削っている本命分野。ここで気が付くのは、有意な計算をするには、量子ビット数を増やす必要があるのに、なかなか伸びない事。これは、量子ビットの宿命ともいえる、他から影響を受けやすく安定性がなく、エラー率が高いから、量子ビットをやたらに増やしても意味がないせい。

 PCなど古典的コンピュータでも、計算中などにエラーは発生するが、エラー修復機能があるので問題ない。ところが、量子になると厄介である。ビットの状態を覗くだけで情報が変わってしまうので始末が悪い。そこで何回も計算して、答え合わせが出来る場合は、答えが合うまで計算し、答え合わせが出来ないケースでは、結果の多数決をとる野蛮な?方法をとるらしい。

 表現は悪いが、量子コンピュータはかっては似非科学と言われたらしい。原理は分かってもその有用性が分からなかったのだ。ところが1990年代に、ショアという人が大変な発見をした。つまり、インターネットなどで使われている公開鍵暗号の原理である、素因数分解をするアルゴリズムを見つけ、それが量子コンピュータに応用できることが判った。以降、量子コンピュータの開発は急ピッチで進み、同時に格子暗号方式など、解読できない新しい暗号の研究も進んでいる。ただ、ショアのアルゴリズムを使っての解読には、200万量子ビットが必要と言われ、第2図では右端上の2050年頃と推定されているので、当面は大丈夫そうである。

 第2図で青の三角形の部分は、NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum computer)と呼ばれる。ノイズがあり大規模でもない量子コンピュータ領域だが、分子同士の化学反応などをシミュレートする量子化学計算などで、古典コンピュータの性能を上回る可能性があると。そのせいもあり、各国ともに、量子コンピュータへの開発投資を始めた。米国1400億円/5年、中国1200億円/5年、EU1250億円/10年、日本200-300億円/10年(2020年度230億円/1年要求)など。

 (参考)2019.10.25の本ブログ「量子コンピュータの実際」 http://joudeki.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-e04a17.html

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