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2019年10月25日 (金)

量子コンピュータの実際

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https://www.cnn.co.jp/tech/35144382.html

 Google社は、スーパーコンが1万年かかる計算を3分20秒で処理できる量子コンピュータ(写真一枚目)を開発したと発表し、「量子超越性」を実証し、ライト兄弟の初飛行にも匹敵する快挙として自画自賛した。マスコミもこれを受けて大きく報道し、日経は「AIを凌ぐ技術革新の衝撃」ともてはやした。

 ウサギさんは、ややへそ曲がりだが、Googleは好きで検索にはなぜか必ず使う。GoogleのAlpha碁に大いに感動して、ネイチャー誌の原論文を本ブログで紹介した程である。だが、今回の発表には少し疑問を感じて、「量子コンピュータの実際」をネットで少し調べて見た。

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191024/k10012146191000.html

 今回もNATURE誌2019.10.24号(写真2枚目)に歴史的な大論文は載っている。Quantum supremacy using a programmable superconducting processorで全7ページ。著者はなんと70人以上で、所属企業や大学は14にも上る大プロジェクトであることが分かる。

 前回のアルファ碁論文のときは、何とか理解できたところもあったが、今回は素人の悲しさ全然分からない。それでも著者欄の最後に載っているJohn.M.Martinis(カルフォルニア大学)と言う人が、中心人物らしいが、その人が親切にも比較的分かりやすいブログをアップしているので利用させて貰った。

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https://gigazine.net/news/20191024-google-quantum-supremacy-programmable/

 ご承知のように量子コンピュータは、量子が0と1の二つの状態を同時に示すという不可解な性質を使う。今回は53qubitを使ったが、古典的なスーパーコンなどは、ある瞬間には53ビットで1情報のみを表せるが、量子コンピュータは2の53乗というとんでもなく多くの情報を示せるのだ。従って、例えば組み合わせの問題を解くイメージでは、古典コンピュータでは、ある53ビットのパターンは答えですかと何度も聞いて、やっと正解にたどり着くが、量子コンでは最初からもう53ビットの答えは分かっている感じ。

 今回のqubitは、写真3枚目のような超電導チップを使った。過去、核磁気共鳴、量子光学、レーザー冷却などいろいろな技術が使われたが、IBMやGoogleが使うようになってから超電導が主流になったらしい。

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https://gigazine.net/news/20191024-google-quantum-supremacy-programmable/

 Sycamoreと呼ばれるプロセッサーは、写真4枚目のようにX印の量子ビットチップを相互に接続する。左端の棒線はノイズによるエラーレートを示すが、黄色はなんとエラー率10のマイナス2乗である。▢はビット間の相互接続をオフにできる新型のノブ。本来、54個(6x9)のチップを搭載する予定だったが、一番上真ん中のチップが動作しなかったのでブランクで53個になったらしい。

 この量子チップのエラーは頭の痛い問題だが、量子が本質的に状況に左右され易く不安定なため。古典コン同様にエラー修復手段はあるが、量子コンでは相当難しいらしい。現在の量子コンのビットはnoisy qubitとも呼ばれ、計算結果が信用できないので、何回も計算してその中で一番多い結果を正解とするらしい。

 また、実際的な問題を解くには、ビット数が100万個以上必要とされ、現在の53個のレベルでは問題外。さらに量子コンに適合したアルゴリズム(ソフト)の開発はこれからである。

 今回、スーパーコンより速いとされた計算問題は、種明かしをすれば、量子コンがともかく動くことを実証するため、量子コンと同じ動きをスーパーコン上でシミュレートさせただけである。量子コンが勝つのが当たり前だが、これが誤解されて大きく報道されたのだ。

 報道は恐ろしい。これも風評被害と言うのか、フェースブック問題と合わせて、暗号資産が昨日5%も下落したそうだ。つまり、量子コンでネットのRSA暗号が早期に解読される恐れである。確かに大きな数の素因数分解の量子コン向けのうまいアルゴリズムが発見され、将来のRSA暗号の信頼性が落ち、代わりに格子暗号方式などが提唱されている。

 ただ、2048ビットのRSA暗号は、現在のnoisyな量子コンでは、2000万qubitが必要との論文が発表されているので、当分ウサギさんの目の黒いうちくらいはRSA暗号は大丈夫であろう。いずれにせよ、ライト兄弟から旅客機の普及まで50年もかかったし、AIの発明から普及までこれも50年はかかっているのだ。

 現在は量子コンの特定問題での「量子超越性」実現であり、次は新薬の開発などの一般応用問題で勝る「量子加速性」の実現が課題である。ただ、「量子加速性」は早くて20-30年先と予測されている。

 

 

 

 

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