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2019年7月

2019年7月30日 (火)

映画「新聞記者」

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https://eiga.com/movie/90346/

 へそ曲がりで流行りの映画は余り見ないが、おサルさんに誘われて、「新聞記者」をイオンシネマ茅ヶ崎で見た。英会話の港南台N校が倒産して、引き継いだ新N校が茅ヶ崎に開校したせいで、茅ヶ崎に5-6年通ったことがあるが6年ぶりで懐かしい。ただ、イオンシネマ茅ヶ崎は初めて。

 「新聞記者」は、ネットによれば6月末から7月初めにかけて、日本でも観客動員数10位以内に入るほどの人気とか。テレビ・新聞などの広告ではなく、口コミやなによりもSNSの効果であろう。映画のhpが何者かにハイジャックされて、アクセスできなくなったおまけまでついたそうだ。火曜日の午前だが、イオンシネマ茅ヶ崎はこんな硬い映画にしてはまあまあの入りか。

 東都新聞社会部の記者吉岡エリカ(写真一枚目左、シム・ウンギョン)は、大学新設計画についての調査を上司から指示される。社会部に匿名の極秘情報FAXが届いたのだ。やがて、内閣府の神崎と言う人物が浮かび上がるが、その矢先、神崎は自殺してしまい、吉岡は自殺の原因に疑問を持つ。元神崎の部下であった内閣情報調査室の杉原(写真一枚目右、松坂桃季)も神崎の死に疑問を持ちやがて吉岡と巡り合うがーーー。

 身内政治、官僚の忖度と保身、情報の改竄、内閣府への権力集中など、安倍長期政権の暗部を見事にあぶり出した傑作。ただ、言論の自由の日本とは言え、安倍政権側による何らかの嫌がらせや反撃も今後予想される。もしあったとしても、それをまた逆手にとれば良いのだ。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2019072502000196.html

 原作は中日(東京)新聞記者の望月衣塑子(いそこ)(写真二枚目)の同名の小説。望月は森友学園、加計学園などの取材チームに参加し、前川文科相事務次官のインタビュー、菅官房長官への長時間質問などで鳴らした人らしい。

2019年7月28日 (日)

ABC殺人事件

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https://blog.goo.ne.jp/ocicat0306/e/b9dbc3edc136699a42272381c8af3a66

 3週連続、土曜日の夕方のNHKBSプレミアムで、アガサ・クリスティの「ABC殺人事件」を見た。2018年に英国BBCで放映されたもの。驚いたことに、1936年の原作から大幅に変わっている。勿論、ミステリーの本筋は変えていないが、登場人物やポワロの背景などが、良く言えば現代風に解釈・変更されていて、1992年のLWT版のDVDに慣れている人には、全く別の作品に見えたに違いない。

 ABCと署名された不気味な挑戦状がポワロに届き、予告されたアンドーヴァで殺人が起きる。被害者の名はアッシャー夫人。死体の脇にはABC鉄道案内が。続いて第2の予告地ベックスヒルで発生した殺人の被害者はバーナード嬢。ABCはアルファベット順に犯行地と被害者を選び、殺人を続けていくのだ。Cまで遂げられてしまい、Dのドンカスターになって何故か犯人は間違えを犯した。ちょっとしたヒントから、ポワロは犯人を発見逮捕して一件落着に見えたが、真犯人はずっと知的で悪賢いやつであったーー。

 ポワロ役はジョン・マルコヴィッチ(写真一枚目右)、クローム警部はルパート・グリント(写真左)、脚本サラ・フェルプス、演出アレックス・ガバシである。ポワロはベルギー時代は警官ではなく神父だったとし、過去のトラウマを執拗に追う。また、ポワロは無残な退職者で、警察からはむしろ厄介な外国人扱いされるなどさんざんの評価で、全般に暗いイメージに仕立てられている。

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https://loveactors.exblog.jp/iv/detail/?s=2732650&i=200602%2F12%2F33%2Fe0034633_935137.jpg

 果たして原作はどうだったのか気になって読み直そうかと思ったが、床下物置を捜すのが面倒で、多分、原作により忠実だとして1992年の英国LWT版のDVDを見た。

 ポワロはデビッド・スーシェ(写真2枚目中央)、右のヘイスティングス大尉はヒュー・フレイザー、左のジャップ主任警部はフィリップ・ジャクソンであり、お馴染みの顔ぶれでほっとする。なお、今回のBBC版では、ヘイスティングは全く登場せず、ジャップもすぐ後任の傲慢な感じのクローム警部に代わっている。

 ポワロのところに何故手紙が来たのかは、LWT版では郵便の到着遅れを計った手段とし、BBC版では犯人がポワロを崇拝したためと解釈している。また、LWT版では、AからCの事件関係者のチームを作って犯人割り出しのヒントを得るが、BBC版ではポワロ単独の推理である。

 暗いミステリーは、脇役などで明るいイメージにする工夫が大事であろうか。

2019年7月25日 (木)

ロバート・レッドフォード

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https://www.asahi.com/articles/DA3S14094308.html

 学士会の帰りに、日比谷シャンテで「さらば愛しきアウトロー」(米2018)を見た。伝説的なアメリカの俳優・監督で、82歳のロバート・レッドフォード(写真一枚目左)の最後の映画とか。英語通信教育のインタビューで知ったもの。彼がブレークしたのは、33歳の時で「明日に向かって撃て」(1969)と意外に遅く、下積みが長く続いた人らしい。以降、「スティング」(1973)、「華麗なるギャツビー」(1974)、「大統領の陰謀」(1976)、「ナチュラル」(1984)など多数の主演をこなした。

 金髪・ブルーアイ・すらりと背が高く・甘いマスク、映画スターを絵にかいたような彼だが、監督業にも進出し、初の「普通の人々」(1980)でアカデミー賞監督賞を受賞。以降、「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992)、「声をかくす人々」(2011)など10本を監督。さらに、最近ではサンダンス映画祭を主催して、独立系制作映画の推進をしてきたそうだ。本作も独立系の映画のせいか、引退映画と言うのに東京では2館のみしか上映していない。それでも、ウィークデーの午後だがシャンテは結構混んでいた。

 話は、2003年の「ザ・ニューヨーカー」に載った74歳のカリスマ銀行強盗フォレスト・タッカー(写真一枚目左、1920-2004)の記事が、レッドフォードの目に留まったことから始まる。面白いと思い映画化を考えていたが、今回、デヴィッド・ロウリィ監督が引き受け実現したもの。タッカーは、レッドフォードそっくりで優しく紳士的であり、銃は脅しに使うだけで撃ったことはない。ただ、17回捕まったが17回脱獄した。その中には脱獄不可能と言われたサンフランシスコ近辺の監獄島アルカトラズを含む。

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https://www.anemo.co.jp/movienews/newmovie/saraba-9-20190705/

 いわば、銀行強盗と脱獄だけを楽しみとして生きていた男で、逃亡中に現在風に言えばパートナー、ジュエル(写真一枚目右、シシー・スペイシス)にまで恵まれる。彼女はタッカーの素性を知りつつサポートしていた。また、長年タッカーを追う刑事のハント(写真2枚目、ケイシー・アフレック)との間には、一種の敬意が生まれるおまけまでがつく。珍しい年寄りの強盗で何回も事件を起こしたのにも拘わらず、なかなか捕まらなかったのは、全国ニュースになるほどの大きな犯罪ではなかったためとか。英語題名は、The Old Man & the Gunだが、これはヘミングウェイのThe Old Man and the Sea(老人と海)のもじり。

 

 

 

2019年7月23日 (火)

潜伏キリシタン

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https://mainichi.jp/articles/20160415/ddl/k43/040/291000c

 学士会午餐会で服部英雄九大名誉教授(写真一枚目)の「潜伏キリシタン関連遺産の文化的意義」という講演を聴いた。講師は2018年に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録された際の長崎世界遺産学術委員長を務めた人。日本の世界遺産はこれで23件(文化19、自然4)となったが、世界では1191件もあるとか。世界遺産制度は1972年に始まったが、日本の参加は1992年で125番目と先進国では最も遅く、その遅れた理由は未だに謎らしい。

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https://www.asahi.com/articles/DA3S13480592.html

 当初は、鉄川与助という教会建築家が長崎中心に多数のユニークな教会を作ったものをベースに世界遺産の申請をしたが失敗し、ユネスコのアドバイスもあって、キリシタンが潜伏した集落中心へ申請内容を切り替えて成功した。上図のように長崎県大浦天主堂、原城跡、8集落、熊本県天草の1集落が構成資産である。

 通常の世界遺産とは違って、見えない(hidden)文化的意義が評価されたと。世界に類のない2世紀以上にわたる禁教の歴史と、特殊なコミュニティ、キリスト教教義の継続維持が驚嘆された。教会ではなく村の歴史と人々の心に焦点を当てたのがキーポイント。なお、お話には直接なかったと思うが、「潜伏」と「隠れ」キリシタンとは何が違うのであろうか。ネットでちょっと調べると、1873年に禁教が解かれたあとに、カトリック信者に戻った人を「潜伏」と呼び、戻らなかった人を「隠れ」と一応言うらしいが、あまり公式な定義はないらしい。

 以下、禁教の歴史の概括のお話あり。1549年のザビエル来日に始まるキリスト教の急速な普及とキリシタン大名(大友・有馬・大村・小西・天草)の誕生、江戸時代に入って1612年の家康による禁教令、1637年の島原の乱・天草一揆を契機にした幕府の徹底した弾圧など。1639年のポルトガル鎖国令のころマニラではスペイン人より日本人の方がむしろ多かったらしい。密告が奨励され、バテレンの場合は現在価値で500万円、日本人では100万円が貰えた。島原の原城には4万人が籠城したが、攻撃した船には幕府だけでなく、当時カトリックと争っていたプロテスタントのオランダ黒船もあったという。

 1805年の天草崩れでは集落の70%が信者で、余りの多さに幕府は暴動の発生を怖れて、踏み絵を2回実施して人数を減らしたそうだ。幕末の1865年、居留するフランス人のために建てられた大浦天主堂に、潜伏キリシタンたちが訪れ告白した。神父は驚愕したがこれが有名な「信者発見」で、1867年に幕府の知るところとなり、ネットによれば、信者3394人が全国に追放される。この浦上四番崩れでは、662名の犠牲者が出たが、海外の大きな批判を招き、明治政府は明治5年禁教を解くにいたる。

 信者は表面は仏教徒で読経に合わせてオラショを唱え、聖水の壺の底にロザリオを隠したりした。このオラショは最近スペインのロ-カルな聖歌であることが分かったと言う。ただ、長年、教会も司祭も教義もない状態が続いたので、キリスト教も自然に土着宗教的なものに変質し、本物のカトリックとは別物となって、上記の「隠れキリシタン」が自然に生まれた。

 

 

 

2019年7月20日 (土)

キオクシア

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https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1193544.html

 数年前は東芝メモリ(写真一枚目)売却の報道で新聞は連日賑わったが、最近はとんと聞かなくなったと思ったら、今回社名を変更するというニュースである。今年末の上場に合わせて、「記憶」とギリシャ語で価値を意味する「アクシア」を組み合わせて、「キオクシア」という妙な社名に変えるらしい。売却後も東芝は40数%の株式を保有していたが、「東芝」の名を使うことでブランド使用料を払っていたのを今後は解消すると。ダイナブックなど、東芝の社名が消えるのは寂しい気もする。

 ところで、上場を前に東芝メモリは思わぬ試練にあった様子。先月、中電のミスで13分間の停電が起き、生産回復に1か月程度かかったと言う。半導体のプロセスは微妙な連続的工程で、途中で一回止まると再開が大変らしい。クリーンルームだけでも浮遊超微小ゴミが収まるまで1週間はかかるそうだ。停電対策には自前の発電所を持てば良いが、大電力なので簡単にはペイしない。瞬停程度はUPSでカバー可能かも知れないが、2010年の瞬停は0.07秒だったが、四日市工場は停止して大損害が出た。サムスンなどは、対策なしとして保険で停電はカバーするが、今度は半導体材料入手難に会うがその保険はありや?

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https://04510.jp/times/articles/-/3248?page=1

 東芝メモリの上場前のもう一つの試練に、メモリの市場が良くないことがあり、現に今年の1-3月は赤字である。アマゾンやグーグルなどのデータセンターのメモリ需要が弱くメモリ売価が下がっているらしい、ただ、今回の停電で東芝メモリの在庫は1か月はあったのでむしろ幸いしたとか。また、韓国が日本の輸出規制でもし生産が減れば価格は上昇するかも知れない。このように価格が安定しないのは、半導体の宿命とも言える。新鋭設備に大規模な投資をし、写真2枚目の大口径のシリコンウェファーにどんどん回路を印刷する仕組みだが、上記の設備稼働を止められないことなどから作り過ぎに陥りやすい。従って、ある意味ではばくち的なビジネスでもある。

 東芝がメモリを売却した際、マスコミはこれからのIOTやAI時代でキーとなるメモリ事業を手放すとはと手厳しい評価をしたが、多分、東芝はこの孝行息子でかつどら息子のメモリ事業を、かなり前から手放すタイミングを計っていたに違いない。たまたま市況が良くて2兆円で売れたが、現在では半値8掛けでも売れないかもしれない。

 ところで、あまり本筋とは関係ない蛇足だが、今回の停電事故で東芝メモリは「6エクサバイトのNAND供給が減る」と発表した。これは世界の年間供給量の2%相当とか。このエクサという表現は世の中でもう市民権を得ているのであろうか? 念のため、エクサは10の18乗で100京である。我らのPC用のUSBメモリ容量は多分数ギガバイトだが、ギガは10の9乗で10億であり、エクサはギガのギガ倍である。ついでに、10の6乗はメガで百万、10の12乗はテラで兆、10の15乗はペタで1000兆、10の21乗はゼタで10垓(がい)、10の24乗はヨタで秭(し)である。 

2019年7月17日 (水)

送電鉄塔

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http://pylon.client.jp/soden_file/minami-yokohama-karyoku_line/minami-yokohama-karyoku_line_no28.html

 一日平均1万歩は歩くのを目標にしているが、雨風の日や一応野暮用もあるので、なかなかその達成は難しい。それでも早朝と午後の2度に分けて歩くのが、歩数を稼ぐのに有効であることが分かってきた。だが、やみくもに近所を歩き回るのではなく、歩くルートを毎回少し変えるとか、他人の散歩ルートをちょっと真似てみるとかの工夫をするのである。

 最近、ちょっとトライしているのが送電鉄塔巡り、と言っても実はブログに書くほどのたいした内容はない。ただ、住宅地の中の意外なところに鉄塔が建ち、次の鉄塔までは通常道路はないので、歩き方を工夫するなどなかなか面白い。年寄りに何よりなのは次の目標地点が明確で、かつ高圧線というガイドもあること。鉄塔と鉄塔の間はだいぶ距離があると思われるかも知れないが、実際は谷あり丘ありの高低差があって意外に近距離に設置してある。つまり、高圧電線の地上からの高さをキープするため、丘陵地などでは間隔を詰める必要があるようだ。

 だが、そもそも送電鉄塔は見渡してもそんなにないよと言われる地域もあるであろう。幸いと言うのか、港南台駅近辺に限ってかも知れないが、ちょっと歩くと10基くらいは御の字である。ネットで調べると、相鉄線いずみ野駅そばに京浜変電所と言うのがあって、神奈川県全域や東京都西部に電力を供給する巨大な電力ハブらしいが、東電横須賀火力と磯子にあるJERA南横浜火力、電源開発磯子火力などから、この京浜変電所への送電線の交差点に丁度ここらは当たるようだ。環状3号の上でやけに高圧線が低いところがあるが、横須賀系統と磯子系統が空中で交差しているため。

 ところで、写真の鉄塔はURLを検索して見つけた近くの日野南小学校脇のもの。左端の建物は小学校で、撮った人はこのあたりは住宅地で写真を撮りにくいとボヤイテおられる。驚くのはこの写真で知ったのだが、鉄道マニアならぬ「鉄塔マニア」らしき人が沢山世の中にいること。各地の鉄塔を写真に撮りアップしているが、解説も電線数・電圧・碍子の形状など極めて専門的である。全国を巡るには、本格的な登山なども多分必要だが、それこそ「鉄塔ガール」なんかもありかな?

 横須賀から来る高圧線は、東京南線1・2号線、同3・4号線と呼ばれ、2系統ある大規模な送電線だが、実は2014年以来電気は流れていない筈。横須賀火力発電所は1960年にオープンした8基からなる大規模発電所で原発3基分に相当した原油依存のため2010年引退した。2011年の福島事故でピンチヒッターとして再開したものの2014年再び停止。以降は2023年石炭火力でリニューアル再開の計画だそうだが、反対運動も起きているらしい。

 写真の鉄塔の高圧線は南横浜火力線と呼ばれ、磯子のJERA(東電・中電)南横浜火力発電所と、電源開発の磯子火力発電所からだが、磯子から金沢区の富岡までは地中ケーブルで送電され、富岡から地上に顔を出す。南横浜火力は1970年世界初のLNG発電をしたので有名。また、磯子火力は石炭では世界最高水準の発電効率を持つそうだ。

 なお、ウサギさんの知り合いの元東電のNさんの話では昭和30年代に日野のあたりに良く鉄塔を建てたよとのことなので、時期的には住宅地が開発される相当前に鉄塔は既に建っていたに違いない

 

 

 

2019年7月15日 (月)

宇宙のこと全然分からない

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https://item.mercari.com/jp/m56975468507/

 たまにマクドナルドやカレーライスが無性に食べたくなるが、同様に科学関係のちょっとした専門書を読みたくなり、日本一のジュンク堂などへ用ありげに勇んで行くのだ。アメリカのハーバード大やMITの教授などの分厚い最新版を買い、帰りの電車の中で得意げにパラパラめくるが、結局は理解不能で本箱に積んでおかれるのが、悲しいかなこれらの貴重な?翻訳本の運命である。

 先日、また悪い癖が出て藤沢のジュンク堂へ行ったが、今度は従来と違って、中高校生向けの「僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからないーこの世で一番おもしろい宇宙入門」(写真)という易しい一般向けの入門書を買ってみた。著者は、スタンフォード大卒の漫画家ジョージ・チャムと、カリフォルニア大教授のダニエル・ホワイトソンである。特に文字サイズがやけに大きくて年寄りに見やすく、まさにハズキルーペが不要な点が気に入った。

 ところが、読んでみて驚いた。宇宙の何が分からないかの分かりやすい解説本だが、読者は現在の最新の量子力学などは、当然知っていると考えているのだ。考えて見れば当然だーー何が分からないかは、分かっていることは全て知っているから分かるのだ。中高校生向きと考えたのは自分の早とちりで、多分大学物理学科の学生くらいが対象であろうか。

 まず、有名な話に我々は宇宙の5%しか分かっていないというのがある。つまり、宇宙の全物質・エネルギーのうち、人類が知っている物質はたったの5%に過ぎず、残りの27%はダークマター、68%はダークエネルギーで、ダークというのは我々が何物か全く分からないという意味である。政治家や経営者は、大金を研究費に使って、科学者は一体何をしとるのかと怒るかも知れないが、この事実も割合最近分かったことである。

 次に、宇宙の物質を最終的に細かく分けたとき、何から成り立っているかについては、12の基本的な物質粒子から成り立っていることが最近分かってきた。つまり、クオーク(アップ・ダウン、チャーム・ストレンジ、トップ・ボトム)、レプトン(電子・電子ニュートリノ、ミューオン・ミューニュートリノ、タウ・タウニュートリノ)の12種である。ところが、困ったことに、我々が知る5%の物資は、アップクォーク、ダウンクォーク、電子の3種類があれば十分で、残りの9種類は何のためにあるのか全く分からないのだ。

 地球が引力で太陽の周りを回るなど、重力は宇宙で最も重要かつありふれた力だが、これが現代物理学では一番分からない現象とか。つまり、重力子などは未だ見つかっておらず、量子力学などの世界と全くそりが合わないし、重力が他の力と比して桁違いに弱い理由も不明である。毎日、重い買い物籠を運ぶ主婦は、重力が弱いなんてウソと思うかもしれない。だが、机上におかれたクリップは、地球全体が引っ張っているに拘わらず、いとも簡単に磁石に吸い上げられてしまう。最近では、重力は我ら3次元の世界でない世界の住人で、ひょいと3次元に顔を出したので力が弱いとの説も有力とか。

 次に分からないものは時間とエントロピー。全ての宇宙の事象は戻れるのに、何故時間とエントロピーはどんどん一方向に進むだけなのか。タイムマシンでもし過去に戻って、自分を殺したら現在の自分の存在は矛盾するから? エントロピーの増加とは、熱力学第2法則のことで、世の中はどんどん複雑さが増加するというもの。例えば、猫が部屋を滅茶苦茶にする。整理したらエントロピーは戻るかと思うが、整理のために余計なエネルギーを使い、これが世の中をより複雑にする。このエントロピーの増加一方により、将来の宇宙は乱雑さは最大限に達し、「宇宙の熱的死」を迎えるという。

 草臥れたのでこの辺でやめる。あとは分かっていないテーマのみ挙げる。「次元はいくつある?」、「光より速く進める?」、「地球に超高速粒子を撃ち込んでいるのは誰?」、「どうして僕らは反物質じゃなくて物質でできているの?」、「ビッグバンのとき何が起こったの?」、「宇宙はどのくらい大きいの?」、「万物理論はあるの?」、「宇宙で僕らはひとりぽっちなの?」。

ーーサイエンティストたちは、幸いにも当分飯の種は尽きないようだーー

 

 

 

 

 

 

 

2019年7月12日 (金)

米中関係の日本への影響

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http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/overview/message/

 学士会夕食会で、高原明生東大教授(写真)の「米中関係の行方と日本に及ぼす影響」という講演を聴いた。本人も認められていたが、米中関係の行方の影響分析はほとんどなく、大半は単なる日中関係についてのお浚いであった。

 中国にとってアメリカは最重要の国であり、アメリカをハンドリングできないような中国トップは失格である。中国人は米国は大好きであり、同時に大嫌いでもあり、米国との摩擦の心理的な打撃も大きい。2017年トランプ政権発足のころは、中国と北朝鮮間が緊張関係にあったこともあり、むしろ米中関係は良好であったが、その後、知的財産権、貿易などで米中間の摩擦が大きくなり、相次ぐ米国の経済制裁が発生した。

 だが、2018年までは中国は「対米21文字方針」という低姿勢策をとっていたが、2019年5月になって、政権内の批判から態度を急変し対米強硬姿勢を示すようになった。2019年6月の大阪G20でのトランプー習会談で、米中交渉再開となったものの先行きは見通せない。また、米朝関係は米中関係の矛盾に北朝鮮が付けいる構図であり、北朝鮮は在韓米軍を認めるとしているので、中朝関係は微妙なバランスの上に成り立っていることになる。

 日中関係は2010年の尖閣諸島漁船衝突事件以来冷え切っていたが、中国は2014年歩み寄りを見せた。これは米中関係の行き詰まりと、日系企業の投資抑制への危機感から。2015年南シナ海を巡って日中間で論争があったものの、2017年中国の「一帯一路」に日本が協力を表明し、2018年10月の安倍訪中では大歓迎を受けて韓国を悔しがらせ、2019年の習近平訪日までもが計画されている。

 特に中国の2018年の経済成長率は6.6%と公式発表されているが、これを信じる中国人はほとんどいないらしい。実際はかなり悪く0%成長との噂である。金融恐慌、資本流出、大衆の不満を警戒せよとの声も多いとか。ただ、中国人の対日イメージは改善されつつある。良いイメージは2017年の31.5%から、2018年は42,2%と上がった。他方、日本人の対中良いイメージは、2017年11.5%、2018年13.1%と余り改善していない。やはり、中国の尖閣領海侵犯、国際ルール違反、歴史問題などが尾を引いている。

 米中対立は長期的な競争であり、短期的には「我慢比べ」である。一方、日中関係の持続的な発展には、矛盾を生きる強さを持ち、関係の強靭性(経済関係、安全保障、文化交流)を一層強化し、脆弱性(尖閣諸島、歴史問題)を抑制管理すべき。抑止力を強化し、それと同時に防衛交流を促進し、一帯一路と自由で開かれたインド太平洋の共生、中国の自制を促す知識交流や、認識ギャップ、情報ギャップの縮小などが必要である

 全般に優等生的国家公務員のレポートといった感じだが、最後に出席者からの質問がいくつかあり、中でも中国人女性から「結局、中国の今後はどうなると見ているのか」という厳しい指摘があった。講師曰く、現在の共産党支配が永久に続くと考える中国人はいない。経済が拡大すれば、それだけ共産党の口出しする余地が狭まるから。ただ、党関係者の既得権益はべらぼうに大きいので抵抗は強く、新体制にソフトには着地せず、何らかの暴力的な解決をみるであろうと。 

 

2019年7月11日 (木)

ゴールデン・リバー

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https://movies.yahoo.co.jp/movie/367307/story/

 チネチッタ川崎で、それこそ何十年ぶりかで西部劇を見た。「ゴールデン・リバー」(2018年、フランス・スペイン・ルーマニア・ベルギー・アメリカ、ジャック・オーディアール監督)で、何とフランス人監督によるいわばマカロニ・ウェスタンならぬフレンチ・ウェスタンである。

 The Sisters Brothersという妙な映画名で、シスター家の兄弟ということだが、ヨーロッパ系のヴェネチア国際映画祭や、フランスのアカデミー賞であるセザール賞のいずれも監督賞を受賞している。例の英語通信教育の宿題で、東京や神奈川でも2か所程度しか上映していないマイナー作品扱い。だが、チネチッタは水曜午後というのに、なぜかかなりの入りである。

 ゴールドラッシュに沸くアメリカ。オレゴン準州のある町に最強の殺し屋シスターズ兄弟、イーライ(写真右、ジョン・C・ライリー)と、チャーリー(写真左、ホアキン・フェニックス)がいた。兄弟は雇い主の提督から、仕事仲間のモリス(ジェイク・ギレンホール)と協力して、ウォーム(リズ・アーメッド)という化学者を捜し出し、始末するよう依頼される。

 一方、一足早くウォームを捜しに出ていたモリスは、金の採掘者のなかに彼を発見し、行動を共にするうちに、ウォームからある衝撃的な秘密を打ち明けられる。ウォームとの間に友情が芽生えたモリスは、提督とシスターズ兄弟を裏切り、ウォームの砂金採りの旅に同行する。

 兄のイーライはロマンチストでお人よし、弟のチャーリーは粗野で大酒飲みだが憎めない愛嬌があり、裏社会でのし上がる野望を持つ。兄弟は二人を追って西海岸を南下するうちに、結局、黄金を目の前にしてウォームたちの仲間となり、四人は協力して砂金採りに励むが、結末はーー。

 フランス人監督らしい登場人物間の緊張した駆け引きや、兄弟のトラウマとなった生い立ちの描写が見事なサスペンス。また、当時の西部の時代背景説明も珍しい。繁栄し始めたサンフランシスコ豪華ホテルの水洗便所に驚き、得意になって歯ブラシを使って見せる兄弟など。

 

 

 

  

2019年7月 7日 (日)

日本の半導体材料は中国のレアアース

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https://www.recordchina.co.jp/b727385-s0-c20-d0052.html

 日本が「元徴用工補償問題」での韓国への実質的報復措置として、半導体や液晶材料3種の輸出規制を始めた。対象のフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素について、今後契約ごとに輸出申請が必要となるが、通常、認可に3か月はかかるので、在庫が1か月程度しかない韓国の半導体メーカーのサムスン電子やSKハイニックスなどには大打撃となる筈である。これらの材料の日本の世界シェアは特にレジストなど90%と高く、半導体や液晶パネルは韓国輸出の20%以上を占める重要製品で、韓国は国を挙げて真っ青になる筈だが、一向に平気の平左の様子である。何故か不思議に思ってちょっとネットで調べた。

 まず、輸出申請が不要な国は、ホワイト国と言って日本には欧米など27か国あるが、韓国は10数年前に対象国となった。今回、3品種に限ってホワイト国待遇から外れた訳だが、もともと韓国は外れていたのと、アジアでは中国やインドなど、韓国以外は皆現在でもホワイト国でないので、そもそも大騒ぎするほどの事ではない。しかも、第3国経由で輸入する抜け道があるし、日本の材料メーカーの生産拠点も海外にあるからそこから調達が可能らしい。

 フッ化ポリイミドは、液晶や有機ELパネルに使われるが、その原材料を作る日本メーカーから直接購入も出来る。レジストは、半導体の製造過程で必須の材料だが、今回の規制対象は極紫外線露光用の先端技術のもので、台湾のTSMCだけが量産に漕ぎつけ、サムスンなど韓国勢はまだ開発段階で当面の影響はないそうだ。また、韓国メーカーの半導体や有機ELパネルの製品供給が遅れれば、パナソニック・ソニーなどの日本メーカーにブーメラン効果があるし、日本の材料メーカーもシェアを失うので、そう簡単には行かないと韓国側は読んでいるのだ。どうやら、これらの話を総合すると、例の安倍政権お得意の「やってますよ」スタイルのPR作戦の一環で、参議院選挙対策パーフォーマンスが濃厚である。

 ところが、思わぬところで反応が出た。中国が今回の日本の措置を大いに警戒し、例えばニューヨークのレコードチャイナ紙は、「日本の半導体材料は中国のレアアースに匹敵する」と大きく報道している(写真)。日本は半導体に重要な14種の材料で50%以上の世界シェアがあって最大の輸出国であり、最も重要な大口径のシリコンウェファーでは70%以上もシェアがある。また、半導体製造装置メーカー世界15社のうち7社が日本であり、2020年代には、IOT・自動運転・ロボットなどで必要となる先端的な半導体チップでは世界をリードするとしている。つまり、日本が半導体を武器に、中国のレアアースもどき世界経済戦争を仕掛ける危険性に警鐘を鳴らしているのだ。

 

 

 

 

2019年7月 4日 (木)

とてつもない失敗の世界史

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https://tsuiran.jp/word/3299484/weekly

 大雨が続いて、おまけにスポーツクラブが今週は休みときて、家に閉じこもらざるを得ないので、普段は買わないような種類の本を暇対策に買ってみた。「とてつもない失敗の世界史」(トム・フィリップス著、写真一枚目)で、著者はイギリスのユーモア作家とか。ヒトの脳は複雑な事象を解明できるのに、極端に変な判断ミスをしたり、ナンセンスな計画を思いつく。交響曲や相対性理論などを想像できるのに、スナック菓子を買うのに5分も悩む。

 世界史にはおかしなことがいくらでもある。例えば、アメリカの赤狩りなどの集団ヒステリー、アラル海の干上がり、クリーヴランドの汚染で炎上するカヤボガ川、オーストラリアの野ウサギ大発生など、いずれも人による失敗・失政が原因である。現在でも、太平洋には巨大なごみベルトがあり、魚はプラごみに悩む。

 統治者にはおかしな人が多いが、中でもオスマン帝国の17世紀前半の皇帝たちは酷かったらしい。面白いのは、ヒトラーは偉大な能力のある独裁者と見られがちだが、実際は無能な怠け者で自己中心的であり、常に酔った道化師のようであった。ただ、大衆受けのする熱弁をふるうことに長けていたと。その他、戦争での失敗、植民地支配での失敗など沢山の例があり、どれも面白いが、以下、特に科学・技術関係での失敗例をいくつか紹介する。

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https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/5261/

 写真2枚目は、1998年に打ち上げられたアメリカの火星探査機マーズ・クライメイト・オービターである。宇宙管制センターが軌道を微調整したとき、意図せぬ事態が起こった。つまり、探査機は火星表面に激突したのだ。原因は、探査機のプログラムはメートル法ベースで作られ、地上のコンピュータソフトはなんとヤード・ポンド法ベースであった! 

 この単位の勘違いミスは、かのコロンブスも犯したという。コロンブスは地球は実際よりずっと小さいと思っていたらしい。9世紀の天文学者ファルガーニーのいう距離を参考にし、単位は古代ローマのマイル(1.48km)と思ったが、実はアラビア式マイルで2km前後だった。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/トロフィム・ルイセンコ

 大勢の国民を飢えに苦しませたとして悪名高い人にソ連のルイセンコ(1898-1976、写真3枚目)がいる。ウクライナの生物学者・農学者だが、ダーウィンの進化論や遺伝説を否定し、取得した形質が遺伝するとした。これがスターリンに、努力すれば報われるとする共産主義の思想と一致すると称賛され、いわば現在では否定されている似非科学が、ソ連や中国・北朝鮮などでは大手を振って農業政策に使われた結果は不作続きで、ソ連は食料の輸入に頼ったがこの事実は国民に伏せられていたらしい。

 似たトップのミスに毛沢東の四害駆除運動がある。1950年代、中国では伝染病が蔓延し、蚊・ネズミ・ハエの撲滅運動に乗り出した。ここで止めておけば良かったが、スズメが穀物を食べるとして、ついでにスズメまで駆除した。結果はイナゴが大発生し、ルイセンコ学説と相まって、深刻な飢饉を招き、1500-3000万人が餓死したのだ。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/トマス・ミジリー

 写真4枚目は、アメリカの発明家のトマス・ミジリー(1889-1944)である。この人は二つの大発明をしたが、二つともとんでもない環境破壊を起こしたので悪名高い。一つは、自動車エンジンのノッキング対策として、有鉛ガソリンを発明した。エタノールでも良かったのに、有害な鉛の方を選んだのは儲かるからである。二つ目は、フロンガスを冷蔵庫用に開発したが、その後フロンはスプレーなどにも広く使われて、図らずも?オゾン層破壊を起こした

 有鉛ガソリンとフロンはともに1996年禁止されている。なお、ミジリーは小児麻痺に罹り、ベッドから起きる際に使う綱とプーリーを使った便利な装置を発明したが、55歳の時にこの仕掛けに絡まり窒息して亡くなったそうだ

 

 

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