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2019年6月 8日 (土)

旅客機業界あれこれ

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 昨日の各紙は、三菱重工がカナダのボンバルディア社と小型旅客機事業の買収交渉をしていると報じた。タイトルを見たときは、てっきり三菱は重荷のMRJ事業から遂に手を引き、カナダの大手へ売る交渉かと思ったが、驚いたことに逆で買う方である。MRJ(三菱リージョナル・ジェット)は、国産初のジェット旅客機で、国の補助含めて6000億円の開発費を既に投じてきたが、開発が遅れに遅れて5回も納期を伸ばし、7年遅れの2020年納入を予定している。その投資回収には1500機以上の販売が必要だが、現在の受注残は407機に過ぎないと。もし、年内に型式証明が取れなければ、事業撤退かと報じられた曰く付きの旅客機。

 ところで、軍用機を除く旅客機メーカー業界のシェアはどうなっている? 上図にあるように、米ボーイング社と欧州エアバス社の2社が、約35%ずつを占める寡占状態らしい。旅客機を座席サイズで分類すると、600座席以上を超大型機(A380)、300-600席を大型機(B777)、150-300席を中型機(B737・A320)、100-150席を小型機、100席以下をリージョナル機と言う。特に、中型機以上は、ボーイングとエアバスのみであり、小型機で強かったカナダのボンバルディアの部門は、既にエアバスの傘下になっている。また、リージョナル機でシェア1位であるブラジルのエンブラエル社もボーイングに組み込まれたそうだ。

 従って、残る大手の独立事業は中国とロシア勢を除けば、ボンバルディアのリージョナル機部門だけとなっていたのだが、ボンバルディア社自体の経営が悪化して、鉄道関係に特化するため、今回旅客機事業を手放すという。MRJにとっての魅力は、課題の保守・修理部門の体制ができることと、1000機以上あると言う顧客ベースであろう。唯一の国産旅客機であったプロペラ機のYS11は、180機の納入と多大の損失を生んで終了したが、最大の問題点はこの保守体制の弱さだったとか。余談だが、YS11とは何を意味する?ーー「輸送機・設計」とエンジン・機体設計案番号11だが、何となんとモックアップ完成披露のキャッチで、「横浜・杉田で11日に会いましょう」説も有力とか!

 三菱重工はご承知の通り戦前の「零戦」などでの高い技術力を誇るが、この技術過信が今回のMRJ開発で裏目に出たと説がある。つまり、戦後長く航空機産業は、米国の戦闘機や旅客機などの一部の下請け生産のみで、今回のジェット旅客機開発は初経験である。特に旅客機はハード技術より、サービス・保守などいわばソフト面が重要で、日本人での経験者が皆無であったらしい。また、拙いことに最近の航空機は電子機器の塊が飛んでいるようなものだが、日本の機器メーカーは全く育っておらず、70%は欧米のメーカーに頼らざるを得ないそうだ。よって、型式証明取得不合格でちょっとした配線変更などがあっても、すぐ2年遅れになると言う。

 この過去の技術成功による経営判断ミスは、航空機に限らない。現に、長崎造船所で「戦艦武蔵」を作った三菱トップは、超大型クルーズ客船2隻の引き合いがあったとき、問題なくできると確信した。ところが相次ぐWIFI追加など顧客の仕様変更に引き回され、納期遅延をリカバーすべく外国人労働者を大量に雇い、長崎で6000人の突貫工事をしたが、管理の限界を超え相次ぐ火災事故を起こした。罰金など2000億円の損失を出して、ほうほうの体でこの大型客船事業から撤退したのだ

 だが、今回のボンバルディア社買収の話が明るみに出たことで、三菱重工のMRJ事業を続行する姿勢が明らかになった。こうなったら、全社を挙げて頑張るしかない。

 

 

 

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