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2018年11月 6日 (火)

エネルギー問題入門

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 久しぶりに藤沢のジュンク堂へ行った。「カルフォルニア大学バークレー校特別講義ーエネルギー問題入門」(リチャード・ムラー著)が目につき、学生の人気ナンバーワン教授とかにつられて、余り考えないで買ってしまった。原著のタイトルを調べるとEnergy   for Future   Presidentsとあり、アメリカのエネルギー政策技術顧問用である。事実、著者は物理学教授だが、米国エネルギー省、NASA、国防省の顧問とか。

 ご承知のように、エネルギー問題は、エネルギー安全保障、地球温暖化、原発問題などどれをとっても、決まった解がなく多様な意見が百出して、まさに政治問題そのものである。また、原発や環境関係の事故などが一度起これば、マスコミは過剰に反応し、政府や企業や諸団体はそれを自己に有利になるように解釈して利用するので、真実が分らなくなりがちである。そこで、本書は米国トップが間違えないようエネルギー関係の正しい情報を提供するのが目的とか。(ウサギさんの注:2012年と若干情報が古く、著者の米国中心の大いなる偏見?も入っているので、日本人の中にはカチンとくる人もいるかも)
 福島原発事故は、その後の世界の原子力政策に多大な影響を与えて来たが、幸い避難が早かったこともあり被曝者は少なかった。津波で1万5千人が亡くなったことを考えれば、むしろ原発が意外に堅牢であったとも言える。むしろ、問題は日本政府がその後全ての原発を停止したことで、その損失は計り知れない。この本とは無関係だが、著者はNHKの「バークレー白熱教室」に出演のため、2014年に来日した。その際の発言に、「福島の放射能レベルは、すでにアメリカのデンバーより低いので、避難はもう不要である」。浜岡原発を見学して、「想定される津波の高さを遥かに超える高さの防波壁はかえって不安を呼ぶ」。
 トランプ大統領ではないが、著者も長い間、地球温暖化なんて嘘っぱちさ、関係研究者が研究費が欲しいだけなのさと思ってきたらしい。ウサギさんも、10年以上前、英会話N校のアメリカ人先生から、米国で地球温暖化などというと、笑って相手にされないと聞いたことがある。ところが、2007年、国際調査委員会(IPCC)は、過去50年間に地球は温室効果により摂氏0.64度上昇したと発表した。そこで、著者たちは独立の研究機関を、ビル・ゲイツなどの支援を得て設立し、IPCCのデータが正しいか検証したと言う。つまり、気温の全測定点38866地点から、IPCCは7280か所のみを選んだが、これらは都市部が多かったので、バイアスがかかっていると疑ったのだ。結果は、著者等にとっては全く意外にもIPCCは正しかった。つまり、頑固者の著者も流石に地球温暖化を認めざるを得なかったのだ。ただ、海面水位の上昇はデータとして認めるが、ハリケーンが増えたなどの気候変動との関係は認めないそうだ。
 エネルギー問題は突き詰めれば、エネルギー安全保障と、地球温暖化の二つに尽きる。アメリカのエネルギー安全保障は、シェールガスのお蔭で、天然ガス+石炭+石油の埋蔵量では、今やアメリカはロシア・中国を遥かに凌ぐエネルギー資源大国であり、エネルギー不足が脅威ではない。問題は石油不足であり、この石油輸入の膨大な貿易赤字対策として、シェールガスやシェールオイルを速やかに開発し、ガソリンに代わる合成燃料の生産体制を整える必要がある。
 一方、地球温暖化の主因は、中国などの発展途上国で石炭の使用が急増していること。その対策では、石炭から天然ガスへの大規模な転換を図ることが重要。天然ガスが出すCO2は石炭の50%であり、天然ガスのコストはほとんどの代替エネルギーより安い。有力な天然ガスの一つであるシェールガスは、アメリカだけではなく、中国など世界中に埋蔵されている。ただ、環境汚染水問題を解決する必要がある。
 将来のエネルギー問題解決のキー重要技術は、シェールガス、シェールオイル、合成燃料、省エネ(断熱材・LEDなど)、ハイブリッド車、スマートグリッド(知的な電力網)など。また、急発展する可能性があるものは、太陽光発電、風力発電(送電網の改良込み)、小型原子力発電、電池、バイオ燃料、燃料電池、フライホイールなど。一方、将来性がなく、もし補助制度があるのなら打ち切ったほうが良い技術は、水素経済(例:水素自動車)、電気自動車(バッテリー交換コストが高過ぎる)、コーン・エタノール、太陽熱発電、地熱・波力・潮力、メタンハイドレート(実用化は遠い将来)、藻類バイオ燃料など。
 最後に、「エネルギーとは何か」という物理学者らしい章があるが、実は、ここがこの本では一番面白いところ。物理学にとっても、エネルギーは時間とならんで掴みどころのないものだと言う。例えば、様々な物質の重さ当たりのエネルギーを計算すると、ガソリンはTNT火薬の実に15倍のカロリーがある。では、何故、岩を砕くのに我々はTNTを使うのか? それはTNTはそのエネルギーを遥かに速く放出できるから。つまり、時間当たりの仕事率が高いためだそうだ。質量はエネルギーである(E=MC^2)とかの説明が続くが、大統領になるような人は、この章は読まなくて良いとあるのでもう止める。

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