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2016年7月30日 (土)

肥薩のみち

Gtr
 
http://www.hojo.or.jp/blog/archives/182
 
 今日の街道をゆくは「肥薩のみち」。肥薩とは、肥後(熊本県)と薩摩(鹿児島県)のことで、九州南部で中央を問題としなかった二つの雄藩の地を言う。肥後は古代においては、優に大和朝廷に対抗しうる一大原始農業国家であったし、薩摩は豊臣政権も徳川政権も不気味に思った軍事国家であったと言う。
 
 肥後は9世紀までは「火の国」で、阿蘇山が赤々と夜を染めていたのかもしれないし、薩摩では桜島が白煙をたなびかせた(写真)。闊葉樹林が野山に豊かに茂り、葉の群れはきらきらと日に照り映える。特に薩摩の紺碧の錦江湾と桜島・霧島連峰は、毎年、小学生が絵画コンクールで、決まって全国一位をとるほど素晴らしいと。
 
 ところで、この熊襲と隼人の両国は、歴史的には敵対関係にあったらしい。秀吉は薩摩を恐れ、その重しとして加藤清正に強固な熊本城を築かせた。この予感は300年後に見事に的中する。西南戦争で西郷軍が熊本城に押し寄せたのだ。最近の熊本地震で傷ついた熊本城だが、政府軍は猛攻に耐え、決戦は熊本の北西15kmの田原(たばる)坂に持ち越された。
 
 司馬は熊本空港から田原坂へ直行している。通常の決戦は、半日か一日もあれば決着がついたそうだが、田原坂では16日間も死闘が続いた。両軍が撃った小銃弾が空中で衝突するのを「行きあい弾」と言うらしいが、これが未だに見つかると言う。結局、西郷は鹿児島の城山で自刃したが、これを持って日本の健全な批判勢力は姿を消し、以降、強力な官権政府が今日まで続いていると。
 
 熊本から海岸線を南下して、八代から急流の球磨川を遡る。この奥の盆地が、桃源郷とか隠れ里とか言われた人吉である。大名は相良氏で鎌倉時代から明治まで、実に670年の長い治世というから驚く。この相良氏は、戦国時代に浄土真宗(一向宗)を禁じたので有名である。すぐ、薩摩藩がこれに習い、「念仏停止(ちょうじ)」がキリシタン弾圧並みに厳しく行われ、多数の「隠れ門徒」を薩摩で生んだらしい。更に、司馬は久七峠で肥後と薩摩の国境を越え大口まで降りたが、大口は海音寺潮五郎の出身地とか。
 
 薩摩藩は、西部の薩摩国、中央の大隅国、東部の日向国の一部からなるが、琉球王国も支配下に置いていた。薩摩藩の公称石高は77万石で加賀藩に次ぐ大藩だが、シラス台地のせいもあって、実質の取れ高は35万石しかなかったと言う。しかも、人口の40%を郷士などの武士が占めたので、農民の負担は極限に達していたが、琉球との交易などで藩の経済は維持されたらしい。
 
 鹿児島県では、小学校の綱引きなどでギリギリの正念場では、「チェスト!関ヶ原」と、かっては言ったそうだ。山口県では「天誅だぁ」になるらしいが、いずれにせよもの凄い感じで、流石に革命の地である。鹿児島弁で「すぐやってくれ」は、「たちンこんめ」である。つまり、太刀が来る前と言う意味。「いっこんめ」と言う副詞は、「一騎来ぬ前」という意味で「すぐ」である。こういう戦国風の言葉が、日常未だに使われる風土である。
 
 司馬は、薩摩半島の付け根の東市来の陶芸家、沈寿官氏を訪問している。先祖は秀吉の朝鮮ノ陣で、島津勢により日本に連れてこられたそうだが、薩摩藩では士族の扱いを受けたと言う。上述したように薩摩藩では農民は奴隷のように使われ、他の藩のような富農が存在せず、明治維新で士族がなくなった時、富農と言う受け皿がなかったので、全ての薩摩の伝統が失われたと。幸い、沈寿官氏は窯元であったので、珍しく富商として存続でき、薩摩の文化・匂いを色濃く残した人らしい。
 
 鹿児島を経て、最後に鹿児島の北30kmの蒲生(かも)に寄っている。ここは日本で唯一のサムライ会社があったので有名である。戦後、米軍が鹿児島市に進駐したとき、蒲生のサムライ会社が決起するとの噂が流れ、驚いた米軍は夜襲部隊を編成して三方から蒲生を包囲したと言う。明治のサムライ制度廃止のさい、蒲生郷の士族だけは、その権威を保存し結社を作った。子弟の東京遊学の学資にあてるとして、薩摩藩から藩有林や藩有牧場の払い下げを受けたと言う。現在は流石に平民も入れて、蒲生殖産興業(株)になっているそうだ。
 

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