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2015年5月21日 (木)

インフレーション理論

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 学士会の午餐会で、佐藤勝彦東大名誉教授(写真)の「ビッグバン宇宙創生のインフレーション理論--観測的実証への期待--」という講演を聴いた。インフレーション理論提唱者の一人で、世界的に著名な物理学者の話に会場は久しぶりに超満員である。話の要点はビッグバンはもはや仮説ではなく、実証の段階にあること。

 宇宙の創生は、歴史的には長い間神学などの人文科学の分野であったが、自然科学としては1916年のアインシュタインの宇宙方程式から始まる。宇宙の物質・エネルギーの分布により、幾何学的な時間・空間が決まると言うものだが、1920年にフリードマンはアインシュタイン方程式を解いて、将来の宇宙が膨張または収縮を続ける条件を求めた。1929年、ハッブルは遠方にある銀河が高速に遠ざかることを発見したが、逆に言えば過去に遡れば宇宙は一点に集まるということである。1946年、ガモフは宇宙に多種類の元素が存在することから、宇宙は火の玉のビッグバンから始まったとしたが、1965年にペンジアスとウィルソンは宇宙マイクロ波背景放射の観測から、このビッグバン理論を実証した。

 ところが、何故ビッグバンが始まったのか、何故宇宙は急速に膨張したのかは依然として不明であった。そこで登場したのが、1981年の佐藤とグースによるインフレーション理論。ここいらから、ちょっと難しくなるが、キーワードは真空のエネルギー。真空とは何もないのではなく、最もエネルギーの少ない状態を言い物理的な実体である。素粒子、反粒子が混在して生まれたり消滅したりする揺らぎの世界でもある。宇宙初期の真空エネルギーには強い斥力があって、その後の宇宙の加速度的な膨張に繋がった。また、真空エネルギーの潜熱の解放により火の玉ができ、量子揺らぎが宇宙の構造の種を仕込んだ。

 一方、インフレーション理論の観測による種々の確認が行われてきた。宇宙は138億年前に誕生したが、1992年、スムートは誕生後38万年という初期段階の遠方の宇宙のマイクロ波写真で、インフレーション理論が正しいことを証明した。特に2011年、ヒッグス粒子が真空中に満ちていることが確認され、インフレーション理論の大きな支えとなった。更に、重力波を使ってビッグバンの瞬間を捉える試みも行われている。ビッグバンの直後の様子は、光や電波では不透明で見えず、重力波が重要となるが、この重力波の波長はやたらと長く、建設中の東大神岡鉱山地下のKAGRAでも検出できない。複数個の衛星の利用に一番の期待がかかるが、結果が出るのは2020年以降となるそうだ。

 宇宙は依然として謎に満ちていて、学者のめしの種は尽きない。今後の関心事は、各々、宇宙の23%と73%を占める暗黒物質と暗黒エネルギーだと。

 写真の出所は、
 

http://www.google.co.jp/imgres?imgurl=http://www.nins.jp/image/organization/president_03.jpg&imgrefurl=http://www.nins.jp/organization/greeting.php&h=201&w=144&tbnid=1fAGIoLAntzOzM:&zoom=1&tbnh=160&tbnw=114&usg=__-K2gRoNxW4SBwsJJJqXmgW3qKoM=&docid=jYdxqrJa9nS5AM&itg=1

 

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