2020年7月10日 (金)

九州の梅雨と中国

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%85%E9%9B%A8

 「令和2年7月豪雨」で各地に梅雨前線が居座っているが、特に九州南部・北部を線状降雨帯が次々と襲うのは何故か、今更だがちょっとネットで勉強。そもそも、梅雨時の東アジアでは、第一図のように4つの気団がせめぎ合っているらしい。

 左上の揚子江気団だけが大陸性で乾燥し、右上のオホーツク海気団、右下の小笠原気団、左下の熱帯モンスーン気団は海洋性で湿気が多いそうだ。また、オホーツク海気団だけが冷たく他は暖かい。揚子江気団と熱帯モンスーン気団は主として湿度の差で間に停滞前線が発生し、オホーツク気団と小笠原気団の間には主として温度の差で停滞前線が出来ると言う。なお、東西の気団同士は、離れていたり、性質が似ていたりで、その間に前線は発生しないと。

 南北の気団が衝突した場所に、東西に数千kmに渡って前線ができ、数か月かかって少しずつ北上し、長雨が1-2か月続くが、これが「梅雨」である。図を見ると、九州など西日本の梅雨は、主に揚子江気団と熱帯モンスーン気団の南シナ海海上などでの衝突が起源であることが理解できる。

 この4つの気団は勢力がお互いに拮抗しているので、梅雨前線は長期に同じところに停滞するが、夏の訪れとともに、南側の気団の勢いが強くなり、次第に前線は北上し遂には消え去る。また、一般にアメリカでもそうだが、大陸の東端は雨が多いという共通した気象傾向があり、梅雨時の西日本の雨量が東日本より多いのはそのせいとか。

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https://www.afpbb.com/articles/-/3287772

 ところで、梅雨は日本特有の現象かと思ったら、中国の方が先輩である。もともと「黴雨(ばいう)」と中国で言ったが、「かび」より「うめ」が良いとして、同音の「梅雨」になったと「チコちゃん」で教わった。今回の豪雨被害(写真2枚目)も、中国の長江や黄河などでは日本の比ではないらしい。304の河川で警戒水位を越え、5000万人が避難したとか。もし、三峡ダムが決壊でもしたらそれこそ中国はすっ飛ぶかもしれない。

 新型コロナウイルスが中国で発生し、今回の大水害とも合わせて、今年は中国の災難の年である。中国には、「庚子(かのえね)大禍」という迷信?があるとか。庚子は十干十二支で60年に一回巡ってくるが、2020年がまさに庚子に当たるのだ。歴史的なこじつけの感もあるが、1840年のアヘン戦争、1900年の義和団の乱、1960年の大飢饉が大禍に相当すると。

 関係ないが、日本でも某副総理の「呪われたオリンピック」発言があったのを思い出した。こちらは60年ではなく、1940年、1980年、2020年オリンピックと40年ごとである。このまま世界中のコロナ禍が収まらないと、副総理の「呪われたオリンピック」が、それこそ予言通りになるかもしれない。

 

  

 

 

 

2020年7月 7日 (火)

三峡ダム、ブラックスワンが迫る

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https://news.yahoo.co.jp/articles/f5d099f3b2be1de4d1601d9875b8dd63f3b246f3

 NEWSWEEK誌日本版は「中国の三峡ダム(写真一枚目)にブラックスワンが迫るー決壊はありうるのか」と報道している。1697年に豪州で黒い白鳥が発見され、「有り得なく起こり得ないことが起きるときに強い衝撃を受ける」ことをブラックスワンというらしい。

 豪雨により1400万人の洪水被害者が既に出ている中国で、世界最大の水力発電ダムの危機が囁かれている。もし、決壊すれば上海が水没するなど、その被害は計り知れないが、ダムの耐久性はほぼ限界に達していると。

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https://life.jah.tokyo/世界最大の三峡ダムはいつ決壊してもおかしくな/

 三峡ダムは第2図のように、長江(揚子江)中流の武漢と重慶の間に位置する。1993年、多くの専門家の反対を押し切り、共産党政府が建設した世界最大の落水式ダム。32基の発電機による発電量は、中国全体の需要の10%を賄うという。貯水量は黒部ダムの200個分、面積は琵琶湖の1.7倍もある。河の水深も深くなり、1万トン級の船舶が5段階の閘門を経て170mの落差を上り、重慶まで航行できるようになった。

 2009年に竣工したが、建設中は官僚たちによる汚職の温床になり、手抜き工事で試験注水時に、ダムの堤体に1万か所の亀裂が発見されたらしい。当初は1000年の計としたが、いつの間にか100年の計となり、もう10年で怪しくなってきた。プロジェクトを推進した政治家トップたちは、責任逃れか竣工式に誰も姿を見せなかったので、スタート時から不吉な?ダムだったらしい。

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ichikawakazuhiko.naganoblog.jp/e2501534.html

 2018年にGOOGLE EARTHの画像(写真3枚目)で、ダム本体の歪が発見されたが、中国政府はこの事実を画像処理のためとして認めなかった。ところが、最近は「設計の範囲内」として歪を認めている様子。ただ、専門家によれば、一般にコンクリートの歪は確かに出るが、あくまでもmm単位であり、もしこのような大きな歪が本当なら、もうとっくに決壊していてもおかしくないそうだ。

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https://tr.twipple.jp/p/1f/3daf07.html

 写真4枚目は、左端の三峡ダム(X印)が決壊した場合の下流のハザードマップである。ただ、もしダムが決壊すれば、普通はまず下流が大被害を受けると思われるが、専門家のシミュレーションではまず上流だと言う。山崩れが同時に起こって、ダムが水をかえってせき止め、上流の重慶などの四川盆地が最初に水没すると。四川省というのは、人口が日本くらいはあるからそれだけでも大変な被害である。

 時間差がややあって、鉄砲水は通常の5倍の速度で、図の赤印の下流を地域を襲い、武漢、南京、上海などはあっという間に水中に没する。この地域は、中国のGDPの約40%をしめ、4-6億人が被害を受ける。海外企業も2万社を超え、停電が長引き、上海の復旧に10-20年はかかるなど、その損害は計り知れないと。なお、中国が、アメリカと戦火を容易には交えないのは、もし三峡ダムを破壊されれば一発で参ってしまうからだそうだ。

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dontena.doorblog.jp/archives/13710120.html

 中国発の新型コロナウイルスとならんで、怖れられているのが、三峡ダムの汚染物質(写真5枚目)。当初から指摘されていたらしいが、上流から流入する多量の土砂でダムの排水口が詰まり、人口3000万人の重慶などが垂れ流す生活排水が、ダムに溜まりに溜まっているらしい。信じられないがその上を人が歩けるほどの厚さだと言う。政府ももうお手上げで放置している様子。もし、これらの汚染物質が下流に一度にまき散らされると、伝染病の蔓延は避けられないそうだ。

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https://oacchannel.com/2020/06/?p=1950

 第6図は三峡ダム崩壊時の海洋への影響を分析したもの。武漢、南京、上海などの大都市を総洗いした流出瓦礫や汚染物質は、長江から東シナ海や黄海に流れ出て、黒潮や対馬海流に乗って今度は日本を襲う。

 まだ起こってはないが、いずれ発生するであろう歴史上まれにみるこのような人災は、中国共産党の一党独裁による欠点がでたものであろうか。一党独裁は、決断が速くて正しい判断の場合はそれなりに有効だが、間違った場合はとんでもない悲劇を起こす例である。早く、過去の過ちを認め、渇水期にでもダムを徐々に壊して元通りにするしかないであろう。230万人とされるダム建設のために移住させられた人々の為にも。

2020年7月 6日 (月)

蝗害


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www.meihoucom.jp/25633

 熊本県南部での集中豪雨で球磨川が氾濫するなど大きな被害が出ている。新型コロナウイルスが収まらないなか災難が続くが、世界でもコロナに加えて他の大きな災害が発生していると、今朝の日経ビジネスは報道している。写真一枚目のサバクトビバッタによる「蝗害」(こうがい)で、第2図のようにアフリカ東部・中東・インドに被害が広がっているらしい。


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www.meihoucom.jp/25633

 FAOは、2020年に東アフリカで2500万人、イエメンでは1700万人が飢餓に陥ると警告している。パキスタンでは、綿花や小麦が食い荒らされ、約5500億円の損害が予測されると。

 また、南米パラグアイでもサバクトビバッタが大発生し、大食料庫のアルゼンチンへ南下している。幸い、アメリカと中国へはまだ来襲していないが、食料入手難という点で日本もいずれ何らかの影響を受けると。

 1平方kmに最大8000万匹の成虫がおり、1日に3万5千人分の食料を食べる。2018年にサイクロンがアフリカの砂漠地帯に大雨を齎し、植物が繁茂してバッタが数を増やした。その後、大雨が飛来先にも続いて更に増えて70年来という爆発的な繁殖となったそうだ。

 1870年のネブラスカの最大の群れの例では、幅180km、長さ500kmに達したと。1958年の観測では、1立方メートルあたり17匹、個体数500億匹、重量12万トンである。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/蝗害

 ウイキペディによれば、バッタは11月に産卵し春に幼虫となり、低い生息密度のもとでは、写真3枚目上の「孤独相」という普通の成虫となる。ところが、不思議なことに、幼虫のときに他の幼虫と接触すると、写真3枚目下のような黒い「群生相」に変わるのだ。これがいわば「悪魔への変身」(相変異)で、高い飛翔能力と集団性が高い成虫が生まれる。

 

 ところで、「蝗」は「いなご」と訓で読むが、見た目に差はない「イナゴ」と「バッタ」は何が違うのであろうか。両者とも分類上は「バッタ目」に属し、「イナゴ科」と「バッタ科」に分かれる。ただし、「イナゴ科」は「バッタ科」のように相変異はしない。平たく言えば、コメを食うイナゴは食べるとおいしく、バッタは不味い。

2020年7月 1日 (水)

なぜノーベル物理学賞をとれたのか

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https://www.sankei.com/life/news/151006/lif1510060042-n1.html

 「ノーベル賞の科学 なぜ彼らはノーベル賞をとれたのか 物理学賞編」(2009年、矢沢サイエンスオフス編著)を、化学賞編に続いて図書館から借りた。1983-2008年の主な16人が特集されているが、内4人の日本人が載っているので紹介する。

 まず、写真一枚目右の小柴昌俊氏(1926-)は、2002年「天体物理学、特にニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献」で物理学賞を受賞。東大教授として当初は「陽子崩壊」を観測すべく、1983年岐阜県神岡鉱山の地下1000mに3000トンの純水プールのカミオカンデを造り、光電子増倍管1000個で観測した。ところが3年間観測しても「陽子崩壊」は一向に起こらず、それこそ国家予算の無駄使いの典型例とされそうになった。

 そこで、ニュートリノの検出に方針転向し、設備を整えて1987年元旦から観測を始めたところ、なんと54日後に、「超新星1987A」からのニュートリノ・シャワーを捉えたのだ。13秒間に11回観測され、そのエネルギーは、太陽が過去50億年間に放出した量の1000倍もあったという。

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https://www-he.scphys.kyoto-u.ac.jp/nufrontier/neutrino.html

 ところで、ニュートリノとは何であろうか。第2図に示すが、物質の基本構成粒子である素粒子は、物質粒子、力を運ぶ光子などのゲージ粒子、質量を与えるヒッグス粒子の3種からなる。更に、物質粒子は、原子核を作るクオークと電子などのレプトンからなるが、ニュートリノはこのレプトンの仲間である。ニュートリノは電気を帯びておらず、小さくて軽いので、あらゆる物をスイスイ通り抜ける。太陽や超新星爆発、原発などでも発生し、1秒間に100兆個ものニュートリノが我々の体を通り抜けているが害はないらしい。

 従来、このニュートリノには質量がないと考えられてきたが、若干の質量があることを、1998年、写真一枚目左の梶田隆章氏が発見し、2015年「ニュートリノ振動の発見」で物理学賞を受賞した。梶田氏は東大の小柴氏の弟子。なお、本書の出版後の授賞なので梶田氏は載っていない。

 カミオカンデは1996年にその使命を終えたが、同年、2代目のスーパーカミオカンデが稼働を開始。5万トンの純水と1万2千個の光電子増倍管で陽子崩壊を監視したが今回も失敗。だが、1998年、地球の下部からのミューニュートリノの数が、宇宙からくる数の半分しかないことから、地球内部でミューニュートリノの一部がタウニュートリノへ変身した(振動という)ことが判り、ニュートリノに質量があることが証明されたという。

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https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d7bfaa2f112a267aa1da4ecfa2a6c8f7

 最近の物理学賞は、カミオカンデ、スーパーカミオカンデなどに代表されるいわば「巨大科学」による成果が増えている。スイスのCERNを使った「ヒッグス粒子の発見」を筆頭に、アメリカのLIGOによる「重力波の発見」など国の威信をかけたように大きな国家予算が使われる。受賞者も研究室で一人コツコツというより、大きな組織のトップで、予算分捕りに長け、大勢の研究者のマネジメントに適した人が貰うようだ。

 その正反対に、昔流の紙と鉛筆で?2008年の物理学賞を取ったのは、写真3枚目の南部陽一郎氏(右、1921-2015)、小林誠氏(中、1944-)、益川敏秀氏(左、1940-)である。南部氏は「素粒子物理学における自発的対称性の破れの発見」、小林・益川氏は「小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の発見による素粒子物理学への貢献」が受賞理由。

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https://slidesplayer.net/slide/15151167/

 3人の授賞理由の共通項は、「対称性の破れ」だが、これを一般の人が理解するのは大変であろう。第4図はマスコミ受けする説明で、南部氏の業績は一口で言えば、上記に何回か登場した質量を与えるヒッグス粒子を予測したこと。南部氏は米国籍だが、もう半世紀前に大きな業績をあげ、教科書に載るほどの伝説的な人であり、2008年の受賞時は「今頃?」という感じだったらしい。また、ピーター・ヒッグス(1929-)は、1964年に南部理論をベースとして、ヒッグス粒子の仮説をたてたが、2012年CERNでヒッグス粒子が観測され、2013年に物理学賞を受賞している。

 一方、小林・益川氏の業績は、クオークとレプトンにおける第3世代の存在を提唱したことにあると。クオークではトップとボトムであり、レプトンではタウニュートリノとタウ電子である。 

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https://www.youtube.com/watch?v=MY-jF0o0lRg

 写真5枚目の3人も本書には載っていない。2014年「高輝度で低消費電力の白色光源を可能とした青色発光ダイオードの発明」で物理学賞受賞。こちらの授賞理由は分かりやすいが、名古屋大の赤崎・天野氏は窒化ガリウムの結晶化により青色発光を可とし、日亜化学の中村氏は事業化に成功。中村氏も米国籍。

 

2020年6月29日 (月)

NかMか

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https://ameblo.jp/bookcafe-cosmos/entry-11592682600.html

 藪から棒だが、アガサ・クリスティの長編ミステリーに「NかMか」(1941年、写真一枚目)というのがある。お馴染みの探偵ポワロやミス・マープルではなく、トミーとタペンス夫妻が主人公の3作目。ちょっと変わった題名は、聖公会祈祷書にある「汝のクリスチャンネームは何か。NかMで答えよ」から採られたという。

 ところで、今日のブログ「NかMか」は、このクリスティの作品とは全く無関係で、日経電子版が2011年の「東京不思議探検隊」記事を動画版でアップしたタイトルから採っている。

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https://style.nikkei.com/article/DGXNASFK16018_16112011000000/

 写真2枚目のように、「日本橋」の「ん」のローマ字表示に「N」と「M」の二通りあり、どちらが正しいの?というのが記者の問題意識。調べるとJR・メトロ・都営地下鉄・バスなどの駅名は全て「M」であり、三越も高島屋も「M」である。一方、道路標識・みずほ銀行・三井住友銀行などは「N」である。

 ことの起こりは、ヘボンが1886年に決めた「旧ヘボン式」にまで遡る。元来、ローマ字表記は、外国人に読みやすくするために考案されたもの。「ん」は[N」としたが、特に「N」が「B」「M」[P」の前に来ると発音しにくいため、その場合に限り例外的に「M]とした。たしかにNIHONBASHIより、NIHOMBASHIの方が発音しやすいのであろう。ところが、ややこしいことに、1954年に旧ヘボン式は改定され「修正ヘボン式」となり、「ん」は例外なく「N]を使うようになったので混在しているのだ。

 ここで、ローマ字の歴史をちょっとお浚いするが、科学と違って言語の世界は、まさにGOCHAGOCHAですっきりしない。ご承知のように、ヘボン式では、「し」は「SHI」、「ち」は「CHI」、「つ」は「TSU」、「ふ」は「FU」など、外国人が発音しやすいようになっているが、これを小学校で教えるには理由が付かない。そこで、1937年に政府は国粋的な?「訓令式」を定めた。「し」は「SI」、「ち」は[TI」、「つ」は「TU」、「ふ」は「HU」、「ん」は[N」であり、これが現在小学校でも教えられている日本の公式なローマ字である。

 ところが、1954年、GHQなどヘボン派の巻き返しがあり、「訓令式」と「旧・修正ヘボン式」が、ケースバイケースに使用可となった。主として、パスポートや駅名などは「旧ヘボン式」、道路標識などは「修正ヘボン式」を使うが、その後、学校で習った標準の「訓令式」はあまり使われないと言う妙な事態になっているのが現状。

 さらに、話を複雑にしているのが、PCやスマフォのローマ字キーボード入力。「じゅうよう」は、ヘボン式や訓練式では上に長音記号を付けるが、コンピュータ入力では[JUUYOU」となり、「ん」は「NN」となるので、このままローマ字記述する人が増えているらしい。

 元の情報がしっかりさえしていれば、ローマ字表示などあまり問題とならないのではとの説もあるが、例えば外国でパスポート情報のコンピュータ検索が必要になったとき、旧ヘボン式で名前を入力したのを忘れていると、そのような人は居ませんともなりかねない。因みに、パスポート上で「群馬」県は、「GUMMA」でエーっと戸惑う人も多いそうだ。

 なお、2009年に東大では、「修正ヘボン式」をベースとしたローマ字推奨方式の使用を学内に通知しているらしい。

 

 

 

2020年6月27日 (土)

なぜノーベル化学賞をとれたのか


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https://www.amazon.co.jp/dp/4774140597/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 コロナ騒ぎで業務を縮小していた図書館もほぼ旧に戻ったので早速一冊借りてみた。「ノーベル賞の科学ーなぜ彼らはノーベル賞を取れたのか-化学賞編」(写真一枚目、矢沢サイエンスオフィス編著 2010年)である。この本はシリーズ物で、物理学賞編、生理学医学賞編、経済学賞編は既に出版されているらしい。

 
 一般論としては、化学は退屈な分野であり、化学賞の受賞者には物理学賞や生理学医学賞のような華々しい、マスコミ受けするような人があまり居らず、人々が忘れがちであると本書はしている。正直、ウサギさんも日本人が沢山化学賞を受賞して居られるが、どなたが何をされたか頭は混乱している。
 
 ウィキペデイアによれば、日本人のノーベル賞受賞者は、物理学賞9人、化学賞8人、生理学医学賞5人、文学賞2人、平和賞1人の計25人であり、ほかに日本人だが外国籍の人が、物理学賞で2人(南部洋一郎氏、中村修二氏)、文学賞で1人(カズオ・イシグロ氏)おられるそうだ。
 
 本書では、2008年から遡る約30年間の化学賞受賞者から、主な20人を選んで一般の人にも分かりやすく紹介している。その中に登場する5人の日本人にスポットを当ててみる。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/下村脩

 最初は下村侑氏(写真二枚目、1928-2018)。「緑色蛍光蛋白質(GFP)の発見と開発」で2008年の化学賞受賞。GFPは顕微鏡の発明以来といわれる革命的なツールでトレーサーに使われた。今や、がんの転移などタンパク質がかかわるあらゆる生命科学の研究に欠かせないと。

 
 1951年長崎大薬学部を卒業し、修士課程でウミホタルの発光物質の抽出に成功したが、プリンストン大学のジョンソン教授がこれに注目し、1960年下村氏を招聘する。そこで与えられたテーマは、オワンクラゲの緑色発光物質の研究。家族全員でクラゲをとり、1日に3000匹、10年で10トンのクラゲを集めたという。
 
 1974年ついに発光の仕組みを解明した。1987年、別の研究者により、GFPのトレーサーとしての応用法が発見され、1994年には緑色以外の色にも発展し、いわばモノクロからカラー化が進んで、その応用が爆発的に進んだという。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/田中耕一

 二人目は田中耕一氏(写真三枚目、1959-)。2002年、「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」で化学賞受賞。平たく言えば、タンパク質の質量を計ったのである。タンパク質は、アミノ酸の数と配列が違うので、その質量は微妙に異なる。従って、タンパク質の種類を特定するのには質量の測定が重要だが、質量は1/1億ー1000億グラムしかない。

 
 質量分析はまず資料を高電圧下の真空中でイオン化し、生成されたイオンを質量に応じて分離してそれぞれの質量を検出する。ところが、かってはイオン化できるのは無機質に限られ、タンパク質は無理であった。だが、田中氏は島津製作所での先輩のアイデアで、添加物を加えてレーザー照射することを日夜実験していたが、ある日、誤って添加物に選んだコバルトの粉末にグリセリンを垂らしてしまった。本来捨てるべきものだが、どうせ捨てるならと添加物に使ってみると、意外にもタンパク質はイオン化されたのだ。
 

 ところで、田中氏はノーベル化学賞受賞者のなかでも稀有の人らしい。東北大学電気工学科の卒業だが、博士でも修士でもない学士は歴史上田中氏が初とか。43歳の無名のサラリーマンでもあり、化学が専攻でなかったことも、色々な化学関係者からの受賞後の講演依頼で困ったらしい。「私は化学が不得意?なノーベル化学賞受賞者なのです!」

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https://ja.wikipedia.org/wiki/野依良治

 三人目は野依良治氏(写真四枚目、1938-)。2001年、「キラル触媒による不斉反応の研究」で化学賞受賞。平たく言えば、ロジウムやルテニウムなどを触媒として、効率よく化学化合物を生成する技術。

 灘高・京大・名古屋大・ハーバード大を経て名古屋大に戻り、定年後は理化学研究所理事長。2007年の天皇皇后両陛下の欧州視察では首席随員を務めるなど、エリートコースを歩んで、本書のネタになるような面白いエピソードは特にない。ただ、理研時代には、STAP細胞事件で大いに泡を食ったらしい。

 「事実は真実の敵」という変わったモットーが持論とか。「事実は事実として尊重するが、事実は限定的であり、その裏に潜む偉大な真実を見逃してしまう」

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www.nikkei-science.com/page/magazine/0012/SHIRAKAWA.html

 四人目は白川英樹氏(写真五枚目、1936-)で、2000年に「導電性高分子の発見と発展」で化学賞受賞。驚いたことに絶縁体の筈のプラスチックに電気が流れたのだ。

 1966年、白川氏が東工大の助手の時、韓国からの留学生が、ポリアセチレンを造る際に触媒の量を間違えたのが大発見の糸口とか。

 導電性ポリマーはいまでは電池・コンデンサー・発光ダイオード・有機ELテレビ・電子ペーパーなどへの応用が広く進んでいる。吉野彰氏がリチウムイオン2次電池の負極に、ポリアセチレン使ったのでも有名になった。

 ただ、受賞時に白川氏は筑波大学を定年で辞めたばかりで、悠々自適の生活が乱されるので、受賞辞退も考えたらしい。同じ受賞者でも、野依氏とは受けるイメージがだいぶ違うのに驚く。

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https://www.sankei.com/life/news/191209/lif1912090027-n1.html

 五人目は福井謙一氏(写真六枚目、1918-98)で1980年「化学反応過程の理論的研究」で化学賞受賞。戦前、京大の工業化学科で学んだが、化学とは所詮電子の科学であるとして、量子力学などの物理や理論化学に興味を示した。

 フロンティア軌道理論を提唱。化学反応のさい、一方の持つ最高エネルギーの軌道電子が、他方の分子が持つ電子の存在しない最低エネルギーの軌道に入ると予言した。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/根岸英一

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www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20180925011190002.html

 本書には載っていないが、2010年に「クロスカップリングの開発」で化学賞を受賞したのが、根岸英一氏(写真七枚目、1935-)と鈴木章氏(写真八枚目、1930-)。芳香族化合物の炭素同士を触媒で効率よくつなげる。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/吉野彰

 同じく本書には触れられていないが写真九枚目の吉野彰氏((1948-)は、「リチウムイオン二次電池の開発」で2019年の化学賞受賞。

 

2020年6月24日 (水)

富岳四十一京

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https://unbalance.xyz/fugaku-supercomputer/

 理化学研究所と富士通のスーパーコン「富岳」(写真1枚目)が、毎秒41京の計算をして世界最速となったが、おサルさんからは、葛飾北斎の「富岳三十六景」ならぬ「富岳四十一京(けい)」と言うと教わった。

 国立研究開発法人理研の「富岳」スパコンは神戸研究所に属し、前身の「京」スパコンを撤去した跡に設置された。理研の神戸研究所と言えば、STAP細胞事件でも有名だが、兵庫県西部の佐用町にある放射光研究センターも、世界最高性能の放射光で有名である。

 これらから、理研は関西の研究所との誤解を受けかねないが、実は埼玉県和光市に本拠があり、筑波・横浜・東京・仙台・名古屋など全国展開している大研究所である。

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 第2図は、歴代トップスパコンの歴史を示す。「2位では駄目なんですか」と言われて名をはせた?「京」は2011年の1年間だけ1位となったが、その後は米国・中国にずっと首位を奪われ、やっと今回「富岳」が奪回した。ただ、これもせいぜい1年で、来年には中国と米国が「富岳」の2倍以上高速のスパコンの計画があるとか。

 日夜頑張っておられるコンピュータの開発者に敢えて失礼なことを言えば、スパコンの性能はもう技術というより、予算がいかにつくかにかかっているらしい。つまり、スパコンの性能は、簡単に言えばパソコンのボードを何枚並列に並べるかというような「力技」にかかっていると。勿論、多数並べれば超高速のバス技術や、メモリ・ファイルアクセス、冷却問題など、実際の難問は多いのは想像できるが。

 「富岳」も1100億円の国家予算を使ったものの、米中両国の威信をかけたスパコン開発競争から一歩引いて、速度よりむしろ使いかってや低消費電力などを目標にしていたらしい。ところが、コロナ騒ぎでその対策のため1年前倒しで実用したら、図らずも?米中を追い抜いてしまったのが真相らしいーー珍しいコロナのお陰。

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https://dempa-digital.com/article/50709

 第3表は「富岳」と「京」の比較である。CPUアーキテクチャで「富岳」はArmとあるが、これはソフトバンクの孫会長が、英国の設計会社ARM社を3兆円以上で買い、ソフトバンクの株価が下がったので有名となったアーキテクチャである。マイコンの命令の数を極端に少なくして、消費電力を減らし、今後大発展が予想されるIOT(Internet Of Things)の端末用マイコンの本命とされる。

 また、ARMは標準ソフトが載るので「京」と違って使いやすく、現に「富岳」の小型応用スパコンは幾台か既に出荷されて、商業ベースに乗せやすいとか。

 CPUの数を見ると、15万個以上とあるが、まさに15万台のPCを並べたに等しく、消費電力も「京」の約3倍である。「京」の消費電力は3万世帯分と言われたから、「富岳」は10万世帯30万人分で、一つの中都市なみである。ただ、昨秋の「富岳試作機」は、性能対消費電力部門で世界一となったそうだ。

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building-pc.cocolog-nifty.com/map/2020/06/post-d5dc05.html

 写真4枚目は「富岳」が設置された建物ではなく、付属の熱源機械棟である。つまり、「富岳」の冷凍機や発電機が入っている。スパコンは発熱が凄いので、一般には空冷ではなく液冷も併用するので、冷却設備は巨大になるらしい。また、電力は商用電源を使うが、瞬停ではなく瞬低(雷などで電圧が下がる)に、これらの冷凍機やファイルシステムが弱いので自家発電機を持つ。「京」の場合は、2基のコジェネ・ガスタービン発電機があるとか。

 ところで、この電力消費量の多さは、大型の計算センターなどでは頭が痛い問題となる。例えば、暗号資産(仮想通貨)では、ブロックチェーン内の取引記録を台帳に追記するが、その承認が定期的に必要であり、承認にはデータの整合性と正確さが求められて膨大な計算量が必要になる。

 世界中の多数の計算センターがネット上で一斉に競争し、最初に解を得たセンターが暗号資産の分配褒章を貰う変わったシステム。計算にはマイニングマシンという、それこそ高速のPCボードを工場のラックに多数並べたような専用の超大型コンピュータを使うが、電気代が問題で中国など安い国にセンターを設置するらしい。

 グーグルなどのIT企業が保有する我々に関する大規模なデータ、今後、AIの発展でビッグデータを保管する巨大な容量の計算センターや、スパコンを上回る性能の量子コンピュータなどが普及すれば、ますます、コンピュータが電力を使うことになり、知能面だけでなくエネルギー消費面でも、人類はコンピュータに譲ることになるかも知れない。  

2020年6月22日 (月)

破壊される銅像

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https://r.nikkei.com/article/DGXMZO60280530S0A610C2FF8000

 アメリカ・ミネアポリスで黒人男性が、白人警官により殺された事件に端を発した欧米各地での抗議デモの影響が、歴史的人物の記念像にも波及している。ちょっと関心を持ってそれらの人物を調べて見た。写真一枚目は、南北戦争当時、奴隷制度の存続を掲げた南部連合の初代大統領ジェーファーソン・デービス(1808-89)の像が、バージニア州で引き倒されたもの。

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https://www.cnn.co.jp/usa/35155134.html
 写真二枚目では、ボストンでクリストファー・コロンブス(1451-1506)の像の首が切り落されている。また、ミネソタ州など多くの場所でもコロンブスの像が破壊された。コロンブスは、日本では新大陸発見の偉人の感覚だが、アメリカ大陸では、アメリカ原住民の大虐殺を行い、アメリカ発見前はアフリカからの奴隷商人であって、発見後にアフリカから奴隷をアメリカ大陸に大量に移入した張本人として、忌み嫌われたとんでもない人物だったらしい。

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https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53004323

 写真三枚目は、南部連合のロバート・E・リー将軍(1807-70)のバージニア州の像が落書きなどの攻撃を受け、州知事は銅像の撤去を決定した。また、フィラデルフィアでは、1960-70年代に、黒人を弾圧したとされるフランク・リッツオ元市長の銅像が破壊され、ついに撤去されている。更に、ニューオリーンズでは、有名な奴隷保有者であったジョン・マクドノーの像が2台のトラックで、ミシシッピー河に捨てられているなどなど。

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https://app.f.cocolog-nifty.com/cms/blogs/

 写真四枚目は、イギリスの奴隷商人エドワード・コルストン(1631-1721)の像がブリストル湾に放り込まれる様子。コルストンの船は約8万人の奴隷を運んだとされるが、イングランドでは長くその功績が讃えられてきたと。

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https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53004323

 写真五枚目は、ベルギーのヘントにあるベルギー国王レオポルド2世(1835-1909)の像が赤いペンキで塗られ、「息ができない」と書かれた。アントワープでは、別の同国王の像が燃やされ撤去されている。1865-1909年ベルギーを統治したが、コンゴを私的な植民地とし、奴隷労働を強制してコンゴ人約1000万人を殺したとして悪名高いと。

 驚くのは、ロンドンのウィンストン・チャーチル(1874-1965)像までが、インド人などへの人種差別主義者として、落書きされ攻撃されていること。

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https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/photo/17/030600058/

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www.kutuh.net/antistalin/07_jp.htm

 ところで、人種差別反対運動に関連する本題の趣旨とは無関係だが、「銅像の破壊」の質と量で最大なものは、何と言っても旧ソ連のお二方の像であろうか?

 写真六枚目は首を切られたウラジーミル・レーニン(1870-1924)の像。ソ連建国の父として敬愛され、銅像の数は14000もあったと言われるが、1991年のソ連崩壊でほとんどが壊されたらしい。

 写真七枚目は、ヨシフ・スターリン(1878-1953)の哀れな像である。1930年代には数千の巨大な銅像がソ連各地に造られ、第二次大戦後は東側諸国をも含めて最盛期を迎えたが、死後の1956年のフルシチョフによるスターリン批判で大悪人とされ、全ての銅像は破壊された。だが、最近、スターリンの歴史的評価は復活しつつあるらしい。まさに「歴史は創られる」のだ。

 

 

 

2020年6月20日 (土)

映画「老人と海」

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https://movies.yahoo.co.jp/movie/25543/photo/

 NHKBSプレミアムでまた古い映画を見た。「老人と海」(米、1958年)である。ヘミングウェイ(1899-1961)原作の「THE OLD MAN AND THE SEA」を丁寧にそのまま映画化したもの。原作は短編だが1952年に出版されると、世界的なベストセラーとなり、1954年のノーベル文学賞受賞に繋がったらしい。ウサギさんは、原文で既に読んだと思っていたが、映画を見たら読んでいなかったようだ。

 キューバの老漁師サンチャゴ(写真一枚目、スペンサー・トレイシー)は85日間も不漁で、助手の少年も家族の命で舟にもう乗らなくなった。貯えも尽きて、三度の食事もままならず、少年のお情けに預かる情けない日々を送っていた。

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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1f/Maind_u0.gif

 ある朝、一人で舟を沖合に出すと、舟より大きいとんでもなく巨大なカジキが繋って、3日間も舟ごと引きずり回される。ウイキペデイアによれば、大きなカジキ(写真二枚目)は体長4m、体重700Kgにも達し、時速100Km以上と水中で最も速く泳ぐ動物とか。

 サンチャゴは、やっと弱ってきたカジキを仕留めて船側に括り付けたが、今度は血の匂いを嗅いだサメの大群に襲われる羽目に。銛などあらゆる武器でサメを撃退したが、港に戻ってみると、カジキはもはや骨だけになっていた。サンチャゴの漁は失敗したが、疲れ果てた老人は今度こそと銛の入手など次の漁の準備を少年に頼むのだ。

 カジキと格闘中の舟中でまどろむサンチャゴは、過去の黒人との腕相撲試合などの夢をたびたび見たが、ラストシーンはアフリカ草原でのライオンの夢である。これをどう読み解くか難しいが、ヘミングウェイの読者への宿題か。

 CGなどがまだない時代に、暴れるカジキとの格闘を撮影するのは、さぞ難しかったであろう。また、主演のスペンサー・トレーシー(1900-67)は、この映画でアカデミー主演男優賞にノミネートされたが受賞は逃した。ただ、「我は海の子」(1937)、「少年の町」(1938)で主演男優賞を連続受賞しているし、9回も主演男優賞にノミネートされているのは、ローレンス・オリヴィエと並んで二人だけだそうだ。

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https://blog.goo.ne.jp/livin_on_a_prayer/e/4dbcf5cb67cf660b39be0ff68c1dec7f

 ついでに、ヘミングウェイの名作の映画化を調べると、写真3枚目は「誰が為に鐘は鳴る」(FOR WHOM THE BELL TOLLS, 米、1943)。スペイン内戦に参加したアメリカ人ロバート・ジョーダン(写真右、ゲイリー・クーパー)は、ジプシーのゲリラに協力を求めるが、ここで美しい少女マリア(写真左、イングリット・バーグマン)と出会い恋に落ちる。

 敵の作戦変更で、今や無意味となってしまった橋の爆破作戦を、連絡不徹底でやむなく実行したロバートは、仲間を逃して自分は死ぬ。この作は1930年代にスペイン内戦に参加したヘミングウェイの経験から。題名は、英国の詩人ジョン・ダンの「個人は人類の一部であり、他の人の弔鐘はあなたの為にも鳴っている」から。つまり、全体のための個人の犠牲を美徳とする精神を説く。

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https://plaza.rakuten.co.jp/mag7cup/diary/201210310000/

 写真4枚目は「武器よさらば」(A FAREWELL TO  ARMS、米、1957)。アメリカ人の青年フレデリック・ヘンリー(写真右、ロック・ハドソン)は、第一次世界大戦でイタリア軍志願兵として参加した。だが、自分の理想と反する戦争の現実に失望し武器を捨てる決意をする。

 そして、知り合った看護婦キャサリン・バークレイ(写真左、ジェニファー・ジョーンズ)と恋に落ち、妊娠したキャサリンとスイスへ逃亡するが、キャサリンは難産の末産んだ子とともに亡くなり、失意のフレデリックは雨の中を立ち去るラストシーン。ヘミングウェーの1918年のイタリア戦線従軍記者の経験がベースの恋愛反戦小説。

 

2020年6月17日 (水)

ミサイル防衛


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tokyoexpress.info/2017/10/25/配備する「イージス・アショア」に巡航ミサイル/

 今日は趣向をちょっと変えてキナ臭い話を一つ。河野防衛相が、10万円給付の二階自民党幹事長に続いて、「ちゃぶ台返し」をした。2017年、安倍首相が米トランプ大統領のご機嫌取りに、官邸主導にて決めた陸上イージス導入計画を、急に停止したのだ。アメリカの反応を気にする外務省は「殿ご乱心」と大騒ぎらしいが、まさに「死に体」政権で起こる現象で、次の「ちゃぶ台返し」は何かともう永田町では囁かれているらしい。

 陸上イージス(写真一枚目、左が管制建屋・右がミサイル発射塔)は、イージス・アショアと呼ばれ、日本に向かう弾道ミサイルを地上から発射する迎撃ミサイルで撃ち落とす。従来、海上のイージス艦が対応してきたが、海上での日夜の連続勤務が厳しく、陸上が楽ということから、そっくり機能を陸に移してイージス・アショアが生まれたらしい。

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https://mainichi.jp/graphs/20171217/hpj/00m/010/001000g/1

 とりあえず、日本をカバーするには2基が必要で、候補地として陸上自衛隊の秋田県新屋演習場と山口県むつみ演習場(図二枚目)が選ばれた。何故かイージスのノウハウが豊富にある海上自衛隊や航空自衛隊でなく、何もわからぬ陸上自衛隊が急に押し付けられ、現地対応の拙さもあって、まず秋田県でトラブルを起こした。

 
 山口県では演習場が内陸のため、発射後のブースター地上落下が問題となっていたが、最近、ソフトの改造では追いつかず、ハードで2000億円・10年間もかかることが判って、遂に停止に追い込まれたもの。良く分からないが、この問題は候補地決定時から判っていて、海岸に設置すれは解決していた筈だが。
 
 ネットによれば、普通の事業案件は現場が周到に準備して上にあげる日本の仕組みだが、イージス・アショアの場合は、官邸トップダウンの上に、さんざんマスコミなどに叩かれ、面目を失った感の防衛省は腹を立て、大義名分の立つこの停止のチャンスを前から狙っていたのではと。

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https://mainichi.jp/graphs/20171217/hpj/00m/010/001000g/1

 日本のミサイル防衛システムは第3図のように2本立てである。まず、敵地で弾道ミサイルが発射されると、米国の早期警戒衛星が発射時の熱を検出する。その情報で地上・海上のレーダーが目標を追尾して弾道軌道を解析し、大気圏外で分離されるロケットエンジンやデコイ(囮)などの中から、本物の弾頭を識別する。イージス艦の迎撃ミサイルから放たれた迎撃体で、高度70-500kmの宇宙空間にて弾頭を直撃し、交戦時の赤外線反応から成否を判別する。

 もし、これで撃ち漏らした場合は、地上のパトリオット・ミサイル(PAC3)を使って、高度15-20kmで撃ち落とす。PAC3は可搬式で大都市や主要地周辺に約120基配置されているが、敵ミサイルの破片はブースターどころでない規模で都市近郊に落下する。だが、核攻撃の被害と比較すれば問題とする人は少ないと。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/THAADミサイル

 それでは、北朝鮮のミサイル脅威が続く中、今後の対策はどうするのであろうか? 河野大臣は、「現在7隻で来春8隻となるイージス艦で当面乗り切る」とする。一方、THAADミサイルというのがある。韓国米軍が設置するとして、中国が猛反対し、韓国に経済制裁を加えた曰く付きのシステム。

 THAAD(写真4枚目、終末高高度防衛ミサイル)は、40-150kmの高度で落下してくるミサイルを撃ち落とす迎撃システムで、パトリオットより高度であり、迎撃に成功した場合、地上への影響が少ないとされる。

 一般人はミサイル防衛と言えば、多分迎撃ミサイルの方に関心が行きがちだが、実は心臓部はレーダーの方であり、このTHAADミサイルは、Xバンドレーダーという高性能なものを使うらしい。中国が韓国への設置を反対したのもこのレーダーの威力が凄いためとか。

 在日米軍には、多分、THAADはまだ配置されていないが、Xバンドレーダーの方は、京都府経ヶ峰、青森県車力各米軍通信所の2か所に既に配置されているらしい。いざ開戦となれば横須賀・沖縄の米軍基地と、この2か所の米軍通信所が最初の攻撃目標になるに違いないとか。

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https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20180316-00082784/

 ところで、ミサイルの各国の開発競争はもの凄くて、アメリカでさえ、防衛システムが追いつかないらしい。特に、ロシアが開発して既に実地に配置したというアヴァンガールド(写真5枚目、超音速滑空体)は、各国とも迎撃にお手上げとか。

 ロケットで打ち上げたあと、加速してグライダーのように大気の薄い層を、マッハ20という超高速で飛行し、飛行機のように飛行経路を変えられる。ロケットで高高度に打ち上げる弾道ミサイルでも、低高度を飛びレーダー逃れをする巡航ミサイルでもない、いわば「滑空ミサイル」という新ジャンルの画期的なミサイル。中国も超音速の滑空体ミサイルを開発したとかで、今やミサイルの脅威は北朝鮮ではなく、ロシアと中国らしい。

 

 

 

 

 

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